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「新成長戦略実現2011」において成果が見込まれる7分野の1つとなった「観光立国・地域活性化」。その取り組みの1つ「着地型観光」の好例を紹介。
「着地型観光」とは、旅行者を受け入れる地域(着地)側が、その地域の持つ歴史や文化、自然などの観光資源を生かして付加価値の高い体験型・交流型の観光商品を企画し、旅行者を呼び込むものだ。従来の「見て、学ぶ」旅行に比べてテーマ性や独自性が強く、その地域ならではの体験ができる点に大きな魅力がある。
旅行者の関心が高いエコツーリズムやグリーンツーリズム、ヘルスツーリズムをはじめ、産業観光や文化観光などをテーマとし、旅行会社だけでなく、地域の行政関係者や宿泊事業者、地域住民やNPO、地域外の有識者などが協力し合い、それぞれの視点や感性を交えながら、新しいタイプの旅を創造している。
「まいまい京都」は、老舗店主やお坊さん、京町家大工の棟梁から主婦や学生、京都が大好きな外国人など、個性豊かでバライティに富んだ面々をガイドに向かえ、京都の一味違った新しい魅力を伝える「まち歩きイベント」だ。「まいまい」は「うろうろする」という京都の言葉だという。
市民ガイドを中心に、京都市上京区役所、京都市景観・まちづくりセンター、京都ユースホステル協会などで構成された「まいまい京都実行委員会」を中心とした産官民連携の取り組みで、地域住民が大切にする"まち"の物語や表情、生活文化、想いなどを参加者と共に体感、共有することを目指している。
2011年3月に全27コースから始まった取り組みは、2011年秋には全56コース、2012年春は全93コースと増え続けている。平安時代の魔界信仰を伝える「魔界」、現役の僧侶と歩く「僧侶」など50以上の多彩なテーマや趣向を凝らしたコースが人気を呼んでいるようだ。
TwitterやFacebook、mixiなどSNSを用いてイベント告知や参加者の生の声を掲載し、事務局と参加者、ガイド、参加者予備軍などが双方向でコミュ二ケーションを図っている。このように、「まいまい京都」は新しい形の体験プログラムを市民や観光客に提供し、京都の新しい魅力を発信・発見する「場」となっている。
このように、地域内外の様々なプレイヤーが協力し合い、地域に眠る資源や新しい魅力を観光商品にし、情報を発信しながら観光客を集める「着地型観光」は、印刷会社も参入しやすいモデルだといえる。それは、印刷会社が地域の様々な産業や業種と結びつき、地元と密着して仕事をしているため、地域のキーマンが誰なのかを知っているからだ。
また、印刷をはじめとした多様なコミュニケーションツールを駆使して顧客や地域の課題を解決してきた経験もある。その印刷会社が中心となってキーマン同士を引き合わせながら企業、行政、学校、地域住民などが協力する団体を作り、協力者が持つアイデアの種を形にしながら、社会のニーズに応えられるような体験型、交流型の観光企画を考えていけば、地元にお金が落ち、地域で循環させる仕組みも作ることができるだろう。
着地型観光の好例はまだ沢山ある。今後も紹介していきたい。
(JAGAT 研究調査部 小林織恵)