本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
広告費全体は下げ止まり傾向、印刷メディアの減少は続く
テレビは下げ止まり傾向、雑誌・新聞の苦戦続く
2011 年の総広告費は前年比97.7%の5.7 兆円だった(電通『日本の広告費』)。4 年連続の減少だが、2011 年は東日本大震災の発生やその後の過度の自粛ムードがあったにも関わらず2.3%減にとどまったので、実質的にはほぼ下げ止まりだったと捉えてよいのではないか。
総広告費の半分弱を占めるマスコミ4 媒体が2.6%減の2.7 兆円に踏みとどまったことが大きい。テレビは震災の影響でCM が停止状態に陥ったにも関わらず0.5%減と前年並みを維持した。アナログ停波(2011年7月)の影響はなく、地デジ化で3 波供用のテレビが売れてBS 視聴者が増えたため、衛星メディアを13.6%増と押し上げる効果があった。
雑誌(7.0%減)と新聞(6.3%減)は従来から続く部数減に加え、紙やインキといった資材料不足の影響も受けた。ラジオ(4.0%減)は既に市場が雑誌の半分以下だが、震災下の被災地などではラジオの有用性の見直しが進んだ。radico.jpの登場もあって新たなラジオ活用の展開が期待されている面もある。
印刷媒体は年後半の回復傾向もプラスに至らず
印刷メディアを多く含むプロモーションメディア広告費は4.6%減の2.1 兆円だった。市場規模は多い順に下記のようになっている。
(1) 折込(5061 億円、4.1%減)
(2) DM(3910 億円、4.0%減)
(3) 屋外(2885 億円、6.8%減)
(4) フリーペーパー・フリーマガジン(2550 億円、3.4%減)
(5) 展示・映像他(2406 億円、8.7%減)
(6) 交通(1900 億円、1.1%減)
(7) POP(1832 億円、0.4%減)
(8) 電話帳(583 億円、11.9%減)
上記プロモーションメディアは、2011 年は震災の影響があったこと、企業は顧客接点により近いところに販促費を投下する傾向を強めていることを勘案してみる必要があるだろう。例えば折込はとくに流通などの旺盛な出稿需要を受け夏頃から急速に回復し、秋から年後半にはほぼ前年比± 0 近辺に回復していた。
インターネットは4.1%増の8062 億円
インターネットは2009 年に新聞を抜きテレビに次ぐ第2 の広告メディアとなった。2011 年もプラス成長だが、2008 年までのような二桁成長ではなく、伸びは徐々に鈍化している。
同じインターネットでも広告の中身は変わりつつあって、成長の軸足は従来のようなディスプレイ広告、いわゆるバナー広告から検索連動型に移っている。また、スマートフォンの普及に伴って、アプリを使ったプロモーション広告も増えてきたため、現在は費用がアプリ開発費やスマートフォン対応インフラ整備費に回って広告費に回りにくい状況もあるという。
広告メディア動向からライフスタイル変化を読む
インターネットの登場により、生活者は情報を受動的に受け取るスタンスから能動的に取りにいく、発信するスタンスに大きく変わった。
インターネット上では口コミが大きな影響力を持つようになった。生活者は企業から発信される情報だけでなく、口コミを購入における重要な判断材料とし、購入者がまた口コミを発信していくような循環が生まれている。
企業がある商品の機能を強調しても、生活者がその「商品のパッケージがおもしろい」という口コミを発信すると、その商品の価値はパッケージにあることが認識される。商品の価値を決める主体が企業から生活者に移りつつあり、こうした形で企業から生活者へのパワーシフトが続いている。
企業はインターネット上での口コミによる価値形成に影響を及ぼそうとするのでなく、健全な口コミ形成の支援や口コミ分析に取り組み、商品開発や改善のヒントに反映していく取り組みが必要とされている。こうした変化を踏まえ、印刷会社や印刷物に求められる役割の変化についても考えていかなければならなくなっている。
2012年4月26日 プリンティング・マーケティング研究会ミーティング「広告市場の最新動向と変化が続く購買行動」より。(文責:JAGAT研究調査部 藤井 建人)