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日本びいきが多いことで知られるフランスでは、日本のコンテンツだけでなく、日本の文化やデザイン、技術に対する関心も高い。【JAGAT大会・特集10】
JAPAN EXPO(ジャパンエキスポ)が7月5~8日にフランスのパリ・ノールヴィルパント展示会会場(ドゴール空港近く)で開催される。
2000年にフランスの若者によって始められたジャパンエキスポは、2011年には来場者が19万人を超え、ヨーロッパ最大規模の日本フェスティバルとなった。マンガ・アニメ・ゲームを中心に、音楽・モードなどの日本の「今」の文化と、書道や武道・茶道・折り紙などの伝統文化が世界に向けて発信されている。
型染版画家の伊藤紘氏 は、1996年から2008年までJAGATの機関誌に表紙作品 を提供してくれた。最初の1年間は、漢字一文字にその意味に合わせた絵柄を組み込んだ「一文字シリーズ」に限定して、「藁」「梅」「巣」「蓮」などの作品が掲載された。その後は、季節に合わせた作品を選んで、1999年4月号に誌名をプリンティングインフォメーションから現在のJAGATinfoに変更した際には、誌名ロゴを考案し、表紙には「水引鶴」を配してくれた。経営情報誌としては少し異色ではあるが、毎号どんな表紙かと楽しみにしてくれた読者も少なくなかったようだ。
型染めという伝統的な手法で、日本の文字とかたちの美しさ、豊かな日本文化の一端を紹介している氏の作品は、海外からも高い評価を受けている。また、日本全国の看板や暖簾、石碑などの文字を収集した『街の文字たち』や、作品集『型染版画 伊藤 紘』などの著作のほか、広告や作品の商品化、国際難民支援会の海外向けグリーティングカードに選出されるなど、多方面で活躍してきた。
そんな伊藤作品13点(「水引鳳凰」「春夏秋冬」「いろは」など)が、13回目となるジャパンエキスポのWABI-SABIコーナーに出品される。
型染版画は、江戸小紋や紅型など日本の伝統的着物や布地の染め技法と同じ手法で、型紙に布ではなく和紙を置きその上から絵の具を刷り込んで染めていくもので、印刷物では伝えられない質感がある。版画部門ではただ一人の出品で、伊藤氏は40年振りの海外の旅に赴くことになる。
朝日新聞2012年6月18日夕刊の1面「ニッポン人脈記 」に、エッフェル塔の前で笑顔を見せる伊藤雅樹氏の写真が掲載された。スカイツリーの進展と併せて、伊藤バインダリーの3代目として、製本業の先行きに対する不安と、自社商品開発の経緯などが語られている。
高度な断裁技術による「ドローイングパッド」と「上質メモブロック」は、グッドデザイン賞を受賞したほか、2011年9月からはニューヨーク近代美術館(MoMA)でも発売されている。さらに、1月にパリのノール・ヴィルパント見本市会場で開催された世界最大規模の雑貨見本市Maison & Objetに出展し、十数件の商談が舞い込んだ。
「伊藤は製本所から毎日、少しずつ高くなるツリーを見上げてきた。『僕にとって挑戦のシンボルです』。あの634メートルのてっぺんは、エッフェル塔の2倍の高さがある。未来も2倍だといいですね、伊藤さん。」という言葉で、新聞記事は締めくくられている。
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■関連イベント「JAGAT大会2012 」
2012年6月22日(金)東京コンファレンスセンター・品川にて開催!
■マーケティング分科会「価値創造のマーケティングを考える」では、
郷好文氏をモデレーターに、山口誉夫氏と伊藤雅樹氏がスピーカーを務めます。
会場では、伊藤バインダリーの「ドローイングパッド」と「上質メモブロック」も紹介いたします。