本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
かっこ類は縦組でも横組でも共通で使われることが多いが、なかには主に縦組で使うものと、主に横組で使うものがある。
パーレンなど多くの括弧類は、縦組と横組で共に使用しており、通常は組方向を変更しても問題はでない。しかし、なかには主に縦組で使う括弧類と、主に横組で使う括弧類がある。今回は、縦組と横組で共通して使用する括弧類について検討する。
“(”と“)”のJIS X 0213の“日本語名称(参考)”は、小括弧、丸括弧である。出版や印刷の現場ではパーレンと呼ぶ場合が多い。起こしと受けがあるが、JIS X 0213の“日本語名称(参考)”は、始め小括弧と終わり小括弧などと呼んでいる。他の括弧類も、始め何、終わり何というような呼び方をしている。
パーレンは、主に補足を示す場合に用いる。ただし、パーレンでくくる補足は、文章の構造を複雑にするので、その使用を避けた方がよい、という考え方もある。
また、パーレンは、小見出し、注記、箇条書きの番号をくくる場合にも使用する。
縦組と横組で共によく使用する括弧類に、パーレン以外にブラケット(大括弧、角括弧)の[]、山括弧の〈〉、二重山括弧の《》がある。
ブラケットは、翻訳において訳者の補足、あるいは引用文での引用者の補足を示す場合に使用されている。
山括弧と二重山括弧は、文中で特別の扱いにする語句、あいは強調する語句を示す場合に使用されている。
パーレンでくくる補足内で、さらに補足を加える場合がある。なかには三重の入れ子になるケースもある。
一般の文章の場合、パーレン内の補足では、一般にパーレンでくくる。パーレンが二重または三重の入れ子になる。同じ括弧なので、誤解される恐れもあるが、意味内容から考えて、それほど誤読されるまでにはいたらないという考え方である。
これに対し、[{()}]または{[()]}といったように異なった括弧でくくる方法もある。数式や化学式では、もっぱらこの方法が行われている。一般の文章でも、[]でまずくくり、その中を()とする例もある。
小見出しなどの番号をくくる場合、次のような方法がある。
ここで、縦組と横組の問題がでてくる。というのは、2.の方法は、もっぱら横組で採用されている方法であり、また、この方法が横組ではよく行われている方法だからである。特に脚注の番号では2.の方法が一般的である。
縦組では、1.または3.の方法であり、2.の方法は、使用例がないわけではないが、見た目でいえば,安定していない。
このように、縦組と横組で共通に使用する括弧類でも、使用の方法まで考えると、まったく同じということにならない場合もあるので、注意が必要である。
行頭に番号を付けた横組の例を図1に、縦組の例を図2に示しておく。
図1:行頭に番号を付けた横組の例
図2:行頭に番号を付けた縦組の例