本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
現在はデータの損失や情報漏洩は許されない時代であり、貴重なデータを制作・共有する印刷会社には相応の対策が求められている。
印刷業におけるセキュリティ対策とクラウド利用について、ビジュアル・プロセッシング・ジャパン(以下、VPJ)の鹿島功敬氏に話を伺った。
VPJは、映像や印刷など高解像のデータを扱うシステムやサービスを販売している。お客様は、印刷業や新聞・出版・広告・デザイン、企業内のコンテンツ制作に関わっている方が多い。
3年前、沖縄の宜野座村にデータセンターを開設した。沖縄は過去に地震が少なく、ネットワークコストも低いというメリットがあり、そこを起点にクラウドサービスを提供している。
実際にネットワーク型ビジネスをやろうとする場合、様々な問題がある。印刷業で言うと、オンラインでお客様とデータの受け渡しやWebから注文を受ける場合、セキュリティをどうするか。決済のためのECサイトをどうするか、顧客管理やコンテンツ管理をどうするか、さまざまなことに悩まなければいけない。
ITやハードウェア、ネットワーク、アプリケーションの知識も必要であり、専門の人材を手当てし、様々な設備を導入しなければいけない。明日からすぐビジネスを始められることにはならない。
そのような場合の選択肢として、クラウドコンピューティングがある。インターネット上のコンピュータやストレージを、使用料を払って必要なだけ利用するというサービスである。
クラウドのメリットは、システムを購入したり、専門のエンジニアを雇う必要がなく、低コストで必要な分だけ利用できることである。
高度なセキュリティが保証されており、悪意のある第三者の脅威や万一の災害にも安心である。
印刷に使うDTPデータやコンテンツは印刷業務のコアである。例えば、お客様の広告データやカメラマンが撮影した写真、2週間かけて組んだデザインデータ、出版印刷で言うと過去の在版データが万一消滅したり、災害や事故で使えなくなったらどうするか。
そのような意味も含めて、VPJはデジタルパラダイス・プロダクションストリームというクラウドサービスを提供している。沖縄のデータセンターを使って、データ入稿からファイル管理・共有、編集作業、リモート校正をクラウド上で行うソリューションである。
在版データやお客様のデータを安定したクラウド環境で管理・共有することによって、セキュリティを確保し、リスクを最小限に抑えることができる。
許可があれば誰でもインターネットでアクセスしてデータを使うことができる。デザイナーや出版社、印刷所など遠隔地のパートナーとも簡単にデータを共有することができる。写真やイラスト、動画をプレビュー付きで管理するデジタルアセット機能や画像フォーマットの一括変換も可能であり、大容量のクリエイティブデータを効率的に管理することができる。
デジタルプルーフは、完成した紙面レイアウトをWebブラウザ上でオンライン校正する機能である。最終的に色校で確認する場合でも、中間プロセスの段階でオンライン校正することによって大幅な効率化が可能である。注釈やファイル添付、差分確認機能があり、校正の進捗管理にも対応している。
デジタルエディットは、クラウド上で原稿のライティングから誌面のデザインまで、全員が並行して編集する仕組みであり、誌面の台割り管理にも対応している。
その他、コンテンツ配信機能もあり、WebサイトやSNSへのコンテンツ展開も容易である。
印刷業のクラウド利用として、大阪A社の大手百貨店向けギフトカタログ制作事例がある。
百貨店のカタログ制作業務は非常に煩雑である。さまざまな関係各所から大量の写真が入稿され、それを取りまとめ、デザインプロダクションへの制作指示やデータの受け渡し、クライアントに進捗を伝えることが必要であり、短期間に校正作業を行わなければならない。
そのため、クラウドサービスを導入し、カタログ制作を止めない仕組みと堅牢なセキュリティ環境を確保した。
さらにWeb上でのデータ受け渡しやオンライン校正、進捗管理を導入したことで制作効率を大幅にアップすることができた。
クライアント側でも作業が楽になり、高く評価されているとのことである。
(テキスト&グラフィックス研究会)