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drupa2012は”All Digital drupa”だった
drupa2012開催、市場縮小と欧州金融危機の影響
4年に1度開催される世界最大の印刷機材展「drupa」がドイツ・デュッセルドルフで開催された(2012年5月3~16日)。展示面積(16.6万㎡)は前回より5%の減少、出展社数は6%の減少に留まった。しかし、来場者数(31.5万人、20%減)には欧州で進行する金融危機の影響が強く表れた。
しかし主催者リリースを見ると来場者数に占める経営トップの割合は高まっているといい、経営トップの推定来場者数は8%減に留まっている。
drupaは世界の有力印刷資機材メーカーが最新技術を持って集結するため、展示の傾向から印刷ビジネスの現在と今後を読み取ることができる。過去4回の開催を象徴したテーマは、1995年:CTP、2000年:デジタル印刷、2004年:JDF、2008年:インクジェットであった。
Landa社がナノグラフィック革命を提唱して話題に
今回drupa2012も、開幕前からB2デジタル、クラウド、スマート、ハイブリッド、メディアなど、様々なキーワードがテーマの候補に挙げられた。さらに、実際に開幕して各社が誇る技術、製品、試作機が一堂に会すると、ランダ、デジタルソリューション、後加工、パッケージ、チャイナなどもテーマの候補に加わった。
開幕前には目玉不足との声もあったが、直前に小森コーポレーションがIndigo生みの親のべにー・ランダ氏率いるLanda社との提携を発表(4月27日)すると、期待はにわかに高まった。Landa社は、(簡単にいえば)インキの粒子を従来の半分大にして様々なメリットを得ようとするナノグラフィック技術を提唱したのである。Landa社はさらにマンローランド社、ハイデルベルグ社も含めたオフセット印刷メーカー有力3社のとの提携を立て続けに発表した。ランダ氏の斬新なプレゼンテーションの反響も大きく、プレゼンの予約券は数日待ち状態の人気となった。開幕前まで無名だったLanda社は、会期の2週間でデジタル新技術開発の中核的存在として世界から認知されることに成功した。
開幕してみれば興味深い様々な各社の動向が見られ、来場者から”やはりdrupaだな”との声が聞かれた。こうして多くのキーワードが挙げられたものの、結局、広く支持を集めるような一つのテーマに絞られることなく2週間の会期を終えている。
全17ホールの特徴から見える全体の傾向
17号館まであるホールは、1~2号館がハイデルベルググループ、3~6号館が印刷・イメージング系、7号館がMIS系・洋紙系、8号館がデジタル印刷・イメージング系、9号館がオフセット印刷系、10~12号館が包装・加工系、12~14号館が加工・製本系、15~17号館がオフセット印刷系で構成された。展示面積はIGAS2011の約7倍だった。
とくに来場者が足を運んだのは、ハイデルベルググループの1~2号館、HPの4号館、コダックの5号館、ランダの6号館、キヤノン・リコー・アグファ・ザイコン・コニカミノルタ・ゼロックス・エスコグラフィックス・フジフイルムといった有力デジタル印刷機メーカーが一堂に集結した8号館、ランダの9号館、ホリゾンとミューラー・マルティニの13~14号館、小森コーポレーションの15号館、KBAの16号館、17号館のリョービだったろう。
Landa社がオフセット印刷メーカー有力3社との提携を発表する一方、5月8日にはコダックとリョービの提携発表もあった。各社の動向を見ていると、デジタル機メーカーとオフセット機メーカーの相互技術交換が活発化し、デジタル機とオフセット機の融合が進み始めた印象を強く受けた。
また、とくに包装・加工系の10~12号館では中国企業が目立って増えていた。drupa2012における中国企業は出展数がドイツに次ぐ2位、展示面積が4位と躍進した。各メーカーも展示やガイドでは中国語対応を強化するなど中国市場を意識していたため、会場内における中国のプレゼンスが全体的に増した印象を強く受けた。
drupa2012は”All Digital drupa”
様々なテーマ候補の挙げられたdrupa2012のメインテーマは何だったのだろうか。drupa2012では営業はWeb to Print、面付けは自動断裁を見据えた高度な自動付け合せ、印刷はB2までのデジタル印刷領域拡大、抜き型不要のレーザーカット技術、デジタル機で出力された版型や厚さの異なるフォトブックなどを連続生産できるバリアブル製本が注目を集めた。従来は自動化が難しいとされてきた営業分野と後加工分野、印刷ではB2分野にもデジタル対応が進んだのである。
2000年の”デジタル Drupa”とは印刷工程だけのデジタル化を指していたが、drupa2012ではデジタル化がいよいよ印刷の全工程に及んだ。その意味で、今回のdrupa2012は”All Digital drupa”であったと位置付けることができ、印刷ビジネスはデジタル化のもう一段の進展について注視すべき局面を迎えている。