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ダブルミニュート、ダブル引用符、山括弧、きっこう(亀甲)の使用法
ダブルミニュート(〝〟)は、チョンチョン、爪括弧などとも呼ばれている。これは、主に縦組で使用する括弧であり、強調したい語句をくくる場合などに使用されている。一般に縦組で強調したい語句は、かぎ括弧(「」)でくくるが、これと区別して特別な意味を示したいときに使用する例が多い。
JIS X 0208では、ダブル引用符(“”、ダブルクォーテーションマーク)の縦書き字形として、ダブルミニュートの字形を示している。ただし、JIS X 0213では、ダブルミニュートは横書きでも使用する例があることから、ダブル引用符とは別のコードポイントを与えている。
縦組でダブルミニュートを使用した原稿を横組で表示する場合には、どのように考えたらよいであろうか。
方法としては、次の3つが考えられる。
1 山括弧(〈〉、《》)など、別の括弧に変更する
2 JIS X 0208の考え方に従い、ダブル引用符(“”)に変更する
3 ダブルミニュート(〝〟)のままとする
その原稿でどのような括弧類が使用されているか、ダブルミニュートや他の括弧類がどのような意味で用いられているかを確認し、その上で判断する必要がある。いずれにしても、どの方式も一長一短がある。
括弧の使用法としては、絶対のルールはない。しかし、それなりのルールはあり、読者は慣習ではあるが、そのようなルールに慣れている。そこで、括弧の使い方としては、一般的なルールに従うことが望ましい、といえよう。
ダブル引用符(“”)は、主に横組で使用する括弧である。
この場合の使用法としては、ほぼ縦組におけるかぎ括弧に該当する。会話や引用文をくくる、あるいは語句の強調に使用する。
こうような使用法から考えると、特別な意味を示したいという目的をもったダブルミニュートの代替括弧としてダブル引用符を用いるには、やや難がある。
山括弧は、一重(〈〉)と二重(《》)があり、いずれも語句の強調に使用されている。どちらを使用するかは、強調の度合いにもよる。
山括弧にすれば、かぎ括弧または引用符(クォーテーションマーク)とも区別が付く点ではよい。しかし、いちいち変更するという手間がかかる点が問題である。
ダブルミニュート(〝〟)は、前述したように主に縦組で使用するので、横組にはなじみにくという問題がある。
また、ダブルミニュートを横組にした場合に、字形の向きも問題になる。図1にダブルミニュートを縦組と横組にした場合の例を示す。字形をどのような向きにしたらよいかは、意見の分かれるところである。
他に縦組で使用する括弧として、きっこう括弧(〔〕)がある。きっこう括弧は、ブラケット([]、角括弧)を縦組用に変形した括弧といわれている。したがって、きっこう括弧は、横組では使用しない方がよい、という意見がある。
しかし、このような考えは、編集の現場でもあまり意識されなくなり、横組での使用も増えている。
ただし、数式や化学式でブラケットの代用として、きっこう括弧を用いることはない。
なお、きっこう括弧の用法としては、ブラケットと同様に、縦組の翻訳において訳者の補足、あるいは引用文での引用者の補足を示す場合に使用されている。また、小見出しをくくる例もある。
きっこう括弧には、二重にしたものがあり、JIS X 0213ではコードポイントが与えられている。