本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2012年5月に開業した「東京スカイツリー」は、伝統的な技術や趣向と最先端の高度な技術に支えられている。
例えば、その基本構造は、伝統的木造建築物である「五重塔」に見られる「心柱(しんばしら)」と呼ばれる技術である。五重塔は木造にも関わらず、過去の地震による倒壊がほとんど見られない優れた建築であり、その心臓部が心柱である。塔体から独立した中空構造で制振効果をもたらすという。
地震が起きた際には、心柱が塔体と異なる周期で揺れることで相互に打ち消し合い、揺れを低減することができる(スカイツリーの場合は、心柱内部は約2000段の非常階段になっているようだ)。
実際に起きた東日本大震災の際、スカイツリーはまだ工事中であったが、作業員は全員無事だった。また、スカイツリーももちろん無事で、その直後には高さ634mに到達したのである。また、
タワーの足元は三角形になっており、頂部に向けて円形へと変化し、見る角度や眺める場所によって多様な表情を持っているという。
設備面を見ると、地上350mの天望デッキまで約50秒で到着するエレベーターは圧巻である。分速600mは、一般的なマンションエレベーターの約10倍であり、定員40人というカゴの大きさも迫力がある。メーカーは速さと乗り心地にこだわり、上下に走る際に使うレール部分のつなぎ目の段差は、0.001mm以下(ほぼゼロ)という。カゴの上部と下部の覆いを斜めにすることで空気抵抗も減らしているようだ。
実際に乗ってみたが、本当に動いているのか?と思うほど振動や騒音がなく、ドアが再び開いたときには350m地点に到達していた。昔、速度を微分すると加速度になることは習った覚えはあるが、何回も微分して乗り心地を極めているのだろう(写真は450m展望台から、高すぎて目印が探しづらい)。
イルミネーションにも日本の伝統色がコンセプトになっている。淡いブルーの光でタワーを貫く柱を浮かび上がらせる心意気の「粋」、江戸紫をテーマカラーとし美意識を示す「雅」があり、江戸の美意識が反映されている。煌びやかなイルミネーションとは言えないが、江戸文化といったことだろう。
個人的感想だが、今まで東京の西側に話題が集中するなか、東側の下町にもやっとスポットライトがあたりはじめたことは、東京の名所バランスを考えてもよいことだ。スタッフ用制服のセンスなど、言いたいことはあるが、混雑解消?のための展望デッキのフロア分けなど工夫点も感じられた。
狭い土地だからこそ三角形の足元になり、地震が多い国だからこそ心柱の構造が採用されたように、工夫や改善はいつの時代、どこにでも対応可能だ。
スカイツリーは、内外装などに江戸時代の伝統的な技術や趣向が駆使されているが、印刷技術は江戸時代の木版印刷(木の板に文章や絵を彫って版を作る凸版印刷)から活字を使った活版、平板プレートを使う平版印刷へと進化してきた。
スカイツリー周辺地域の下町でも印刷会社は数多く存在する。ツリー見上げながら業績も上がってほしい今日この頃である。
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