本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
『印刷白書2012』は2012年9月12日発刊予定で進行している。さらなる内容の充実を図るべく現在鋭意執筆、編集、制作の最中である。
今年も『印刷白書』の編集時期が来た。JAGATでは、1994年より毎年『印刷白書』を刊行している。当初バインダー形式で出していたものを並製本の書籍の形にリニューアルしたのが、2006年版からである。1994年から2005年までは、「印刷産業の動向把握に必要な公表データを、できるだけ時系列に遡って網羅・掲載している」ことが特徴としてあった。
1994年当時は、プリプレス分野でのオープン化が進み、一方では海外生産へのシフトや雇用調整の動きが見え出した。その後、毎年印刷産業および周辺産業や社会の動きについて見てきた。デジタルネットワーク時代になってプリプレスの概念も変化し、白書における項目立ても変化してきている。経年で見ていくにはそれは役に立つ情報であったが、違う観点のデータで見せることはできないかと考えた。
JAGAT調査研究の年間の集大成という位置づけもあり、書籍の形式にした2006年からはそれぞれ毎年トピックになる情報も加味していくことにした。2010年版からは、産業構造に関するデータを相当数増やし、経営比率に関する調査比較などを掲載することにした。また電子書籍やM&A、新聞業界などのデータも加え、官公庁はじめ各種データが出揃う時期を勘案し、発行時期をそれまでの6月から9月に移している。その結果、JAGATオリジナルデータも増やしてきている。
2009年版から「特集」を設けるようにしている。2009年には「地域活性化」について、2010年には「公益資本主義」について特集を組んだ。昨年は東日本大震災の影響から「震災とメディア」を特集として取り上げ、震災後のメディアのあり方、メディアの使命、復興、公益性、公共性などを考慮し、信頼ネットワーク再構築の提言を行った。
東日本大震災から1年がたち、ビジネスモデルや生活スタイルは、震災前と大きく変わったのだろうか。復興の兆しは、あらゆる場面で見られ、徐々にではあるが需要も喚起 されつつある。
前回「生き延びるためのメディアと信頼ネットワークの再構築」を執筆したクォンタムアイディの前田邦宏氏に再度原稿を依頼し、その後の知見や構想を具体化する準備に入った今の状況についても紹介してもらう予定である。
2012年版の「特集」では、前年を踏襲しつつ震災後の状況を掘り下げるとともに公益について触れていく方針である。
今回は公益社団法人に移行して初めての『印刷白書』制作になる。内閣府による公益の事業仕分けの結果『印刷白書』は、公益事業と認定されている。公益性とは何か、公共性とは何かを印刷・メディア産業の使命や今後のあり方などを絡めて、追求していくことが必要になる。そして印刷を通じての文化・社会への貢献が「公益社団法人」としての命題になってくる。
『印刷白書』がその一翼を担うことになっていければと考えている。
(研究調査部 上野寿)
■関連情報
『印刷白書2012』は2012年9月12日刊行予定で準備中です。広く産業に役立つ年鑑の視点から、すべてのデータを精査し、より信頼性の高い白書の編集、制作を進めているところです。