本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
集客目的から各店舗の販売促進を意図するイベントが増えている商店街。商店街活性化における従来型の手法と、「バル」、「100円商店街」、「まちゼミ」などの新しい手法を前・後編に分けて紹介する。
地域コミュニティの中核として、時代や生活者と共に姿を変えてきた商店街だが、大店立地法が制定された2000年以降、相次ぐモール型ショッピングセンターなどの出店により、駅前商店街の空洞化や空き店舗増加などに拍車がかかった。2006年に大型の郊外型施設に対する抑制をかける「まちづくり3法」が制定されるも、経営者の高齢化や後継者問題、魅力的な店舗が無いなど課題を抱える商店街が増えていた。
従来から続く、お祭りや大売出し、地域の特色を生かした集客目的のイベントを開催して活性化を図る商店街を後押しする目的で、2009年には、地域コミュニティーの担い手・商店街へ補助金、税制、人材育成など総合的な支援を行なう「地域商店街活性化法」が制定された。
以降、NPOや産学官、社会起業家など様々なプレイヤーが参加しながら商店街活性化が進められている。
商店街活性化には様々な手法があるが、その代表的なものを3つ紹介する。
1つ目は、イベント開催や情報発信に力を入れ、集客する方法だ。季節ごとにイベントを開催し、「毎月第三土曜日は○○市」など、イベントを固定化して認知してもらう。また、イベント告知のため、ポスターやパンフレット、チラシなどによる地域住民への告知や、動画配信やSNSによる情報発信、地元ケーブルテレビ局での放映など、様々な手法で集客を促進している。
2つ目は、商店街の観光地化である。昔ながらの風情を残す街並みや歴史・文化、建築物を観光資源とし、商店街自体を観光地にして人を呼び込んでいる。異なる時代の景観特徴を生かして、来街者の回遊性を高めながら商店街活性化を図る埼玉県川越市の6つの商店街などはこの好例と言える。
3つ目は、商店街の加盟店舗で利用できるスタンプカードやポイント制度、商店街通貨などを導入・利用し、定期的に訪れる生活者を増やすケースだ。東京・品川区の武蔵小山商店街パルムの「パルムポイントカード」や、商店街でのショッピングポイントと地域貢献活動などに対して付与されるコミュニティ・ポイントを集約し、地域の経済振興とコミュニティ活動との相乗効果を狙ったICカード「えるもーるLUCK CARD」(東京・烏山駅前通り商店街)などが有名だろう。
その他にも、シャッター化が進む商店街で魅力的な新店舗出店を促す活動や高齢者に優しい商店街、安心・安全や環境などに注力し地域コミュニティの核として機能する商店街など、多くの成功事例がある。また、近年は集客を目的とした施策に加え、各店舗の販売を促進する新しい手法がうまれてきている。
上記で紹介してきた事例を見ていただければわかるように、商店街の活性化を考える際には、イベントを告知する様々な印刷物や商店街のマップ、ポイントカード、商店街のフラッグなど、大小さまざまな印刷需要が必ず生まれている。今後、商店街活性化事業との関わりの中で印刷会社にとって重要になるのは、仕事を「発注される」側から、いかにして仕事を「発注する側」、生み出す側にまわるのか、だろう。
印刷会社は、様々な産業や業種のクライアントや地域の課題を、印刷をはじめとした多様なコミュニケーションツールを駆使して解決してきた経験がある。さまざまなノウハウを持つ印刷会社は、従来のような「モノ作り」だけでなく、課題解決のための「コトを作る」能力も、すでに持ち得ているのだ。
次回、後編では商店街活性化における印刷会社の実力、可能性と、新しい3つの手法を紹介する。