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クォーテーションマーク(引用符)の使用法
クォーテーションマーク(引用符)にはシングルとダブルがあり、もっぱら欧文で用いられている約物であるが、和文でも横組では使用している。例えば、日本工業規格(JIS)では、引用や語句を明確化する場合、かぎ括弧(「」)は使用しないで、クォーテーションマークを使用している。
なお、縦組の本でも、本文中の見出しにかぎ括弧を使用している場合でも、横組とする柱ではクォーテーションマークに変更している例がある。
クォーテーションマークとかぎ括弧は、その使用法がほぼ同じであり、縦組でかぎ括弧にする箇所を横組ではクォーテーションマークにする、という方法が和文での代表的な使用例である。
その理由としては、欧文との整合性をとれる、あるいは、横組でかぎ括弧を使用すると、特に終わりかぎ括弧の位置が下がった位置で安定しない、といったことによる。
これ以外に、横組において、一般的な場合には、かぎ括弧を使用するが、特別な意味を強調するためにダブルクォーテーションマークを使用する、という例もある。
かぎ括弧にも、一重と二重がある。一般的には一重を使用し、入れ子にする場合や特別な場合(書名などを示す)に、二重を使用している。
クォーテーションマークも基本は同じであるが、入れ子にする場合、クォーテーションマークでは、次の2つの方法がある。
“…‘…’…”
‘…“…”…’
日本語組版では、ダブルの方が区別がつくので、一般的な場合に、まずダブルを使用する前者の方法がよいであろう。JISでも、そのようにしている。
なお、かぎ括弧を入れ子にする場合、入れ子の部分に使用するかぎ括弧の行送り方向の線の長さを短くした“小かぎ”とよばれるものに変える方法も行われている。かぎ括弧でくくる引用文中に、一重かぎ括弧でくくった強調語句や二重かぎ括弧でくくった書名がある場合、そのまま表示できるというメリットがある。
図1に、クォーテーションマークとかぎ括弧を使用した例を示す。
クォーテーションマークは、他の括弧類と同様に、字幅を半角(二分)と考えれば、その前または後ろに二分アキを確保する。結果として、字幅とアキを合わせて全角ドリにするのが一般的な方法である。JIS X 4051でも、同様な方法を規定している。
しかし、それでは空き過ぎであるという考え方もある。この考え方では、シングルの字幅は四分角(四分の字幅)であり、ダブルの字幅は半角(二分)とし、それぞれの前または後ろは四分アキにするという方法である。この場合は、シングルは結果として、字幅とアキを合わせて二分ドリになり、ダブルは二分四分ドリとなる(例を図2に示す)。
横組を前提にしてクォーテーションマークを使用したドキュメントを縦組で表示する場合、欧文では90度回転して表示すればよい。しかし、和文の場合、対策を考えないといけない。
一般的に使用しているダブル(またはシングル)のクォーテーションマークを一重のかぎ括弧、そうでないシングル(またはダブル)のクォーテーションマークを二重のかぎ括弧に変更する、と考えればよいのであるが、書名をくくるのは、どの場合でもダブルクォーテーションマーク(または二重かぎ括弧)とするのが普通なので、機械的な処理はむつかしい。
また、横組で特別な意味でダブルクォーテーションマークを使用している場合は、ダブルミニュート(〝〟)にするという方法があるが、内容をみないと判断できない例もある。
このように縦組と横組の両方を考慮するのは簡単ではない。