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この度『印刷白書2012』が完成、発刊の運びとなりました。刊行のご挨拶を申し上げます。
現在の経済情勢を見ますと、海外では2011年の夏以降、ギリシャの財政危機を発端にスペイン、イタリアと経済規模の大きな国々にまで債務危機の問題が発生し、ヨーロッパ経済は衰退しています。また、新興国も金融引き締め策などから、これまでの高い成長率は維持できなくなりました。アメリカ経済は年度末にかけ改善の動きがありましたが、強いものではありません。日本経済は、東日本大震災により落ち込んだ企業の生産活動が、昨年の夏以降、震災前の水準まで回復しましたが、世界的な経済の減速、円高、タイの洪水などがあり、景気回復のペースは鈍化しました。足元では復興需要の本格化への期待がある一方、電力供給の制約など、景気を下押しするリスクもあります。2012年8月の月例経済報告では、ヨーロッパや中国などの海外経済の減速を受けて生産や輸出に陰りが見られることから、景気の基調判断を2011年10月以来、10カ月ぶりに下方修正しました。
一方、印刷業界にとって2012年最大のイベントは今回で15回目となるdrupaで、5月3日から16日までの14日間、デュッセルドルフで開催されました。デジタル印刷機、なかでもロール紙を供給する「Inkjet Web Press」は花形で、出展社のブースは多数の注目を集めていました。日本では今のところ一部の大企業にしか設置されていませんが、欧米のように導入が進んでいくものなのか、これからの動向が注目されます。インクジェットタイプにしろトナータイプにしろ、シートはB2サイズが主流というのも今回のdrupaの特徴でした。従来のA3フォーマットの限界を超えて、その他の加工のソリューションと併せて、現代のマーケットニーズによりフィットすることも期待されます。
上記のように経営環境やテクノロジーのイノベーションが急変する中で、印刷業界の残存企業はどのようなとるべき道があるのかについては、各業界団体の皆さんが叡智を絞って素晴らしいビジョンを作ってこられました。長い時間をかけて苦労して用意されたこうした提言も、各企業の経営者が決断し、それぞれの会社の進むべき方向へ歩み出して初めて報われると思います。各企業の変革のスピードの方が速いのでしょうか。それとも時代の変化のスピードの方が速いのでしょうか。
この『印刷白書2012』 は産業の動向や技術トレンド、経営課題など、この1年の印刷業界全般にわたっておりますが、まずはユーザーの皆様にとって興味あるテーマのところから、一つでもニつでも読んでいただきたいと思います。厚い本だからといって敬遠せず、そばに置いて時々そうやってこの本を開いてみてはいかがでしょうか。今回のこの白書が、皆様の会社の経営に、少しでも参考になるよう願っています。
2012年9月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎
『印刷白書2012 』
2012年9月26日発刊