本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
集客から各店舗の販売促進を目的としたイベントが増える商店街。商店街活性化の「新・三種の神器」と、印刷会社が担うべき役割、可能性について考える。
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新・三種の神器のまず1つめは、「バル(Bar)」である。バル(スペイン語)は、簡単なおつまみとお酒を出す立ち飲み酒場のこと指し、最近はその気軽さから都市圏での出店も増えている。2004年、北海道函館市でスペイン料理フォーラムの一環として商店街イベント「函館バル街」が開催され、その後近畿圏を中心に各地へと広まっていった。
■函館バル街で使用される「バル街チケット」や参加店舗MAP
3000円前後のお得な複数枚チケットを事前購入し、イベント当日は参加店舗でピンチョス(おつまみ)とお酒を楽しむ。参加店舗は新規顧客の開拓や店舗
PRができ、顧客は新店舗の発掘や小額投資でお店の雰囲気を知ることができる。商店街は、特設会場などを用意せず各店舗へ直接誘客できるなど、「バル」イ
ベントは参加店舗、顧客、商店街の三者にとってそれぞれメリットがある。イベント運営の諸経費はチケット販売費の一部でまかなうなど、助成金に頼らないモ
デルとしても注目を集めている。
2004年の「函館バル街」以降、兵庫・伊丹市の「伊丹まちなかバル」、京都・四条烏丸の「京都バルフェスタ」、大阪・堺市の「堺東まちなか逸品バル」など近畿圏での開催が相次いでいる。特に「伊丹まちなかバル」は、約100店の店舗が参加し、3000セット前後のチケットが販売されるなど、大きな成功を収めている。
2つ目は、商店街全体を1つの100円ショップになぞらえ、100円商品で顧客を呼び込む「100円商店街」である。「100円商店街」は、2004年に山形・新庄市の新庄南本町商店街のNPO法人アンプが中心となって始めた活動で、現在までに全国約90市町村で実施されている。
■大阪・住之江の粉浜商店街で開催される「100円商店街」のポスター
参加店舗は趣向を凝らした100円商品を店先に並べて誘客し、店内会計で自然と店内へ誘導するシステムになっている。「店内に入りにくい」、「入ったら何
か購入しなければならない」という従来のネガティブなイメージを払拭し、専門店は在庫品を処分することができる。各店舗と顧客の直接接点を生み、リピート客などを創出するとともに、
商店街の滞在時間を増やし回遊性を高めるなど、利点の多い商店街活性化事業なのだ。
最後に紹介するには、店舗が講師となってプロならではのノウハウを参加者に無料で伝える少人数制ゼミ「得するまちのゼミナール(以下、まちゼミ)である。その先駆けとなったのは2002年に愛知県岡崎市の中心市街地で開催された「岡崎まちゼミ」だ。年2回開催で2012年夏には20回目を迎えている。中心市街地では約80店舗で講座が開催され、毎回1500名以上の参加者を生み出しているという。
飲食や美容・健康、物販など、商店街にある参加店舗の店主が講師となってプロならではの専門知識や各店のこだわり、お店や取扱い商品、サービスの特徴を無料で伝授してくれる。各店舗が持つ魅力をPRするとともに「(店舗の)入りにくさ」を解消し、店主の人柄やお店の持つ雰囲気を知る機会を提供している。
「バル」同様、「まちゼミ」も関西圏を中心に盛り上がっていたが、2012年7月中旬から約1カ月間、都内初となる「青梅まちゼミ」が開催された。ゼミには市内67店が参加し、「プロが教える「だし取り」のいろは」など個性豊かな全77講座が実施された。店舗と参加者のみならず、参加者同士もコミュニケーションを図れるということで、参加店舗と参加者から高い評価を得た。
以上3つの新しい手法を見ると、商店街イベントが、広場や会場など商店街に設置された「場」に人を呼び込むスタイルから、商店街に所属する各店舗「点」へ集客する形に変化してきているとわかる。イベントは点と点とを繋ぎ、参加者を回遊させるような役割が強くなっている。
では、印刷会社には何ができるのか。
従来からありとあらゆる業種の顧客を持ち、客観的な目を持って各顧客のPRや販促の手助けをしてきた印刷会社は、「点」を光らせるための経験やノウハウを数多く培ってきた。今後は、ポスターやチラシ、チケットなどの印刷だけでなく、各店舗やそれぞれの商店街の魅力を最大限に引き出すアドバイザー的な存在としてイベントの主催側へと周り、様々な知恵を絞っていけるのではないだろうか。そのために必要な知識や経験、可能性を印刷会社は多分に持っているのだ。
興味深い事例やアイデアのきっかけやは、意外と近いところにある。
今後も、優良事例などを紹介していきたい。