本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
ARを活用して印刷物からWebへ流れるメディア展開の可能性はあるのか。
印刷物からWebへのメディア展開の可能性、印刷物を出発点(撒き餌)にしてWebまで導入する仕組みを「Web to Print」として、その可能性を考えてみたい。そうした展開がどんなメリットをもたらすのかも考えてみたい。
現在、多大な情報量、インパクトのある訴求力などの特徴を持つメディアと言えば、印刷物ではなくWebである。そうしたメディアの特徴が持ちながらも印刷会社のクライアントに対するメディアの扱いは、やはり印刷物が中心である。Webや電子カタログからはじまり最終的には印刷物への誘導されている場合が多く見受けられる。Web制作では、確かに印刷物よりはるかに低コストでの制作ができ、大規模な生産設備も必要としない。
そうした要因がWebを印刷物への導入部分(乱暴に言えば撒き餌)としてのメディアの置づけにされる傾向があるのかしれない。別の本音では従来の印刷会社の主な商いとしての金額で折り合いが難しいことも考えられる。
現在のメディア展開は、印刷物から始まり印刷物だけに留まらずWebをはじめとするいろいろなメディアにわたっている。その展開の方向も前述のように印刷物を中心としてWebや電子カタログから印刷物への誘導が通常的に行われてきた。一方では、その反対の流れつまり印刷物から始まりWebへ導く仕組みのものも出始めている。ARと印刷物のクロスメディア展開において言えば、例えばカタログや雑誌などの印刷物をスマートフォン(カメラ)、電子端末を通して見て、そのディスプレイに表示された印刷物上に3Dのキャラクタや商品が合成される。それが、現物の商品(家具、車、料理とかカタログで紙面に記載できるもの)3Dに出来、実際の表現、訴求の面から見れば段違いその効果は大きい。
さらに大きくリアルに体験ができるデジタルサイネージで見たいとか本物実物を見たいとなれば、その印刷物を持参させることつまりこの印刷物がきっかけとなってその設置場所(特定の店舗、施設、展示場など)に誘導が可能ともなる。その途中でスマートフォン、電子端末を使用するのでおのずとWebを経由した流れともなる。
その機会を利用してWebから「いつ、どこで、どれくらい(アクセス数)」などの情報も得られる。印刷物を使ってWebへ誘導する手段を提供することができれば、顧客の製品やサービスの認知度向上、新たなプロモーションや販促活動、無駄なコストの削減へと繋がることが期待できる。印刷会社の立場で見ると、それによって同時に印刷物の価値向上を実現し、顧客の課題を解決することになる。
Webは、周知の如くpull型のメディアである。一方、テレビやラジオのpush型のメディアで情報提供者側からユーザーに対して情報が「押し出されてくる」の感じからこう呼ばれている。必要な情報をユーザーの自らの操作を伴わず、自動的に配信される。印刷物でも紙のチラシとかカタログを例にとって見るとpush型のメディアであると言える。こうしたメディアの特性を考えるのであれば、印刷物を使ってWebへ誘導する展開もありと考えられる。
昨今、注目されているスマートフォン、電子端末上のAR(拡張現実)や位置情報サービスの活用は、push型のメディアと考えられ、印刷物からpull型という弱点を克服しWebへ誘導する手段なのではないだろうか。
印刷物とARとのは融合しやすい仕組みとされている。実際にARアプリの開発を自社で手がけるとなるとなかなかハードルの高いものになってしまっている。電子端末の電子カタログ用のアプリの開発にしてもかなり高価であるのが実状である。今後これらの普及によって一般的に取組みやすくことが予想される。それは単に訴求力が高いからということではなく、クライアント側の効果の検証やコストダウンの要求、売り上げ貢献への施策にも対応できる仕組みとなる可能性があるからである。今後のARの普及に大いに期待したいものである。
(JAGAT 研究調査部 福原節寿)
「Print to Web」とは -ARで拡大する印刷ビジネス-
印刷物からWebへの流れるメディア展開の可能性はあるのか
2012年11月13日(火) 14:00-16:30(受付は13:30より)