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ルビの配置法として肩ツキにする場合と中ツキにする場合がある。
ルビの用途はさまざまであるが、主な使用例として漢字の読み方を示す場合がある。親文字1字にルビ1字の場合、縦組では、親文字の上半分に付ける方法がある。この方法を肩ツキ(肩付き)という。
これに対し、親文字の中央に付ける方法があり、この方法を中ツキ(中付き)という。
(図1参照)
縦組では肩ツキにする例と中ツキにする例があるが、横組では必ず親文字の中央に付ける中ツキにする。横組ではルビを親文字の左右中央に配置し、左右のバランスをとった方がよいからである。
図1
ところで、肩ツキ、中ツキの用語は、ややあいまいな点がある。次のような2つの考え方がある。
(a)肩ツキと中ツキは、あくまで、親文字1字に対し、ルビ1字の場合の配置方法である。
(b)親文字1字に対し、ルビ1字の場合と限定したものではない。親文字の先頭とルビの文字列(ルビ文字列)の先頭を揃える方法が肩ツキであり、親文字とルビ文字列の中心を揃える方法が中ツキである。
活字組版では、親文字1字に3字以上のルビが付く場合、前後に配置する文字種(文字クラス)により個別の箇所ごとに工夫していたので、一般に(a)のように考えてきた。
これに対し、コンピュータ組版では、その処理を明確にする必要があり、親文字の上端を揃えるのなら、ルビ文字が3字以上付く場合も、同様な処理にするということで、(b)の意味で使用している例がある。
実際のルビの処理方法を考えた場合は、(a)と考えた方がよい。その理由としては、行の途中にある親文字1字にルビ文字が4字付いた場合、(b)でいう肩ツキの方法を採用する例は多くないであろう。(b)の考え方では、中ツキについては、統一的に処理できるが、肩ツキでは必ずしもそうはならない場合がある、ということである。
前述の(a)の考え方で肩ツキを選択した場合であっても、1文字の親文字に片仮名ルビが付いたときは、親文字の中心とルビ文字列の中心を揃える配置処理を選択する方式がある。語の全体に平均に付けるということを重視した考え方である。
逆に、縦組において、片仮名ルビは親文字列の中心とルビ文字列の中心を揃えて配置するが、親文字数とルビ文字数が同数、例えば3字の親文字に片仮名ルビが3字の場合、3字の親文字のそれぞれの中心に3字のルビを配置しないで、各親文字の上寄せにして配置する方法もある(図2参照)。こちらは肩ツキという方法を重視した考え方である。
図2
親文字1字にルビが2字付くモノルビの場合、ルビの文字サイズが親文字の1/2であれば、親文字とルビ文字列の長さが揃うので問題はない。前述の(b)でいう肩ツキでも中ツキでも、同じ配置位置になる(図1参照)。
それでは、1字の親文字に3字以上のルビ文字が付くモノルビの場合、どう処理したらよいのであろうか。
ルビの文字サイズが親文字の1/2であれば、親文字からルビ文字がはみ出すことになる。この処理方法としては、次のようなものが考えられる(詳細は次回以降で解説する)。
(1)親文字からのルビのはみ出しは、後ろ側を優先し、前後に配置する文字種により、前又は前と後ろの両側とする。後ろの文字に掛けてよい量だけまずルビを掛け、それで処理できない場合、次に前の文字に掛けてよい量だけルビを掛けてはみ出させ、それでも処理できない量は、前及び後ろに均等に追加する(最後のケースでは前後の文字との字間が空くことになる)。
これに近い考え方の処理方法は、活字組版で行われていた。
(2)親文字からのルビのはみ出しは、前と後ろを均等とすることを優先する。前と後ろの文字にルビが掛かってよい量が同じ場合は、前と後ろに均等にはみ出させ、前と後ろの文字にルビが掛かってよい量が異なる場合は、まず掛けてよい量まで前又は後ろに掛け、それで処理できない量は、前及び後ろに均等に追加する。
(3)親文字からのルビのはみ出しは、前後に配置する文字種に関係なく、前と後ろを均等とする。
肩ツキ(前述の肩ツキと中ツキの考え方の(a))の場合、ルビの字数が多い処理方法としては、(1)が一般に選択されるが、(3)とする例もある。(3)とする例は、親文字列とルビ文字列は必ず中心を揃えるようになっており、(a)でいう肩ツキは、ルビ文字列の入力の際に、1字のルビ+ルビの全角スペースという形で入力し、処理する方法である。
中ツキ(前述の肩ツキと中ツキの考え方の(a))の場合、ルビの字数が多い処理方法としては、(3)が一般に選択される。多くはないが、(2)とする例もある。
JIS X 4051では、親文字列とルビ文字列の中心を揃える方法だけを規定していた。しかし、2004年の改正で、親文字1字のモノルビで、かつ、ルビが1字の場合に限ってのことであるが、処理系定義で肩ツキにしてよいとする規定を追加した。
なお、JIS X 4051の規格本体では、肩ツキ(肩付き)と中ツキ(中付き)の用語を使用していない。ただし、解説では肩ツキ(肩付き)について、前述の(b)の意味での使用例があるとともに、解説の別の箇所では(a)の意味での使用例もある。