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営業成績がなかなか伸びない営業パーソンには、ヒアリング能力(傾聴力)が弱い人が多い。
■ヒアリング能力(傾聴力)とは
社会人に必要な傾聴力とは、「相手の話を丁寧に聴き、理解すること」だが、とにかく一字一句聞き漏らすまいと集中しているはずなのに、相手が何を言わんとしているのか、明瞭に聞き取れない人は多い。例えば、一時間の会話をすべて記憶することなど録音機でもない限り不可能なので、人間の脳は普通、内容を「理解」するために、聞きながら自然に情報整理しているのだが、日頃から習慣的に訓練していないと、これが難しい。ヒアリング能力の低い人は、結果として理解力が弱いため、次のビジネス行動に支障が生じる。
では、ヒアリング能力を高めるためには、どうしたらよいか。基本的なことだが、まずは、いつも5W1H「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」の6つの要素を念頭に、話したり聞いたりするよう心掛ける(ビジネスの場合は、もうひとつのH、いくら/How muchが加わる)。新聞や雑誌を読んだり、テレビの討論番組を見たりする際に、この7要素を基に短時間で要約し、書き出すという訓練も有効だ。お客さまの話を聴きながら、7要素をポイントにメモを取る習慣をつけるのもよい。
■“聴く”ために心掛けること
ヒアリング能力の高い人は、ただ黙って相手の話を聞いているわけではない。お客様の話を促し、お客様の真意を聞き取るために、適切なところで相槌を打ったり、適切な質問や意見をはさんだりして、会話を繋いでいる。必要なのは、さまざまな事に関して、さまざまな角度から観察し、常に自分なりの考えや意見をもつ姿勢だ。情報を集め、分析し、咀嚼し、自分の考えをもつ習慣がない人に、適切な質問はできない。ただし、自分の考えをもつことと披露することとは違うので、注意が必要だ。時折、立て板に水で、一方的に自社の商品やサービスを説明し、自説を語る営業パーソンがいるが、大抵売れない。売れる営業パーソンは、お客様との対話において、聴く量7が、話す量が3だという。話す割合がこれよりずっと多くなると、契約比率に反比例するそうだ。あくまでも「お客様に話していただく」こと=相手の潜在ニーズや本音を聴くことが基本だ。
■信頼関係を築く
しかし、お客様のニーズや本音を聴き出すのは、そう簡単なことではない。まず、コミュニケーションの土台となる信頼関係を築かなければ、心を開いて語ってもらえない。話し手との間に時間をかけて、心理学用語でいうところのラポール(Rapport)を立てなければならない。ラポールとは、もともとフランス語で、「心の架け橋」という意味だが、相手に対する「誠意」「好感」「敬意」によって築かれる。無意識のうちに「この人なら自分の本根レベルで話ができる」と思ってもらえる状態だ。挨拶から始まり、、言語内容以外のコミュニケーション要素のすべて、例えば表情、視線、言葉遣い、態度、服装・身だしなみなどから判断されていることを忘れてはいけない。時間的に余裕のないしぐさ、興味のなさそうな様子、早口や大きすぎる声で一方的に話す態度など、すべてNGだ。“聴く”ための姿勢・態度、環境設定は、お客様に会う前から、自ら準備し整えなければならない。同時にヒアリング能力は、テクニックに頼るのではなく、お客様の前に出る以前に、日常のあらゆる場面で、自ら鍛えていく心掛けが大切だ。
(JAGAT 教育コンサルティング部 泉 聡子)
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