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アナログ製版からDTPへの移行と最新のEPUB化方法
2006年に、コミック製版のデジタル化をテキスト&グラフィックス研究会で取り上げた。
当時はカタログ・パンフレットや雑誌・書籍の制作は、DTPへの移行がほとんど済んでいた時期でもある。むしろ、DTP化されていないのは数式の組版とマンガくらい、とも言われていた。
マンガはたいへん特殊な世界で、週刊誌などは極端に短いサイクルで編集・入稿・製版・校正が行われ、印刷・製本されている。原画をスキャンして写植を切り貼りするアナログ製版が主流であり、24時間稼働と人海戦術で対応するしかない世界であった。また、人気作品では10年とか20年以上も連載が続いているものがあり、「途中で書体を変えたくない」という事情があった。
連載された作品は、ほとんどがコミックス(単行本)化や文庫化される。その際、柱やロゴなどの不要な部分の削除やサイズ変更による差し替えなど、手間がかかっていた。
共同印刷では職人技に頼る方式にも限界があり、InDesignに独自開発のプラグイン「ComicPacker 」を搭載しDTP(フルデジタルまんが制作システム)への移行を進めたとのことである。
DTP化への移行は、製作サイドだけでなく編集サイドにもメリットがあった。
InDesignの段落スタイル機能が使えるようになって、普段利用するセットをパターン化し、組版指定やルビの設定が非常に簡単になった。また、レイヤー機能を利用することで、コミックス(単行本)化や文庫化する際のデータ再利用が大幅に容易になったと言う。
英語版などを制作する際にもレイヤー機能が活用されている。
この頃は携帯版の電子コミックが流行りだした時期でもあった。携帯版は、モニター画面が小さくコミックをコマ単位で表示する。そのためにコマカットという非常に手間のかかる作業が発生していた。DTP(フルデジタル)化によってこれらの工程も効率化できる見込みである、近い将来に登場するささまざまなデバイスにも対応できるだろう、とのことだった。
現在、安価で携帯性の高いカラーのタブレット端末、Kindle FireやGoogle Nexus7、iPad miniなどが各社から発売され始めた。電子コミックを楽しむには、最良のデバイスと言えるだろう。
また、電子コミックの配信フォーマットとして期待されているのが、電子書籍フォーマットの世界的な標準であるEPUB3の固定レイアウト方式である。タブレット端末側でも対応が進んでいる。
マンガは、国内では子どもから大人まで幅広く読まれている。人気作品はTVドラマやアニメ、映画化されることも多く、影響力の大きい分野である。スマートデバイスで気軽に読めるようになれば、相当に普及することは間違いない。さらに、電子コミックは国内だけでなく海外マーケットでも期待されているコンテンツである。
つまり、環境とコンテンツさえ揃って来れば、電子コミックが本格的に普及する日も近いだろう。
コミックの製版・印刷とデジタル化の現状や以前との違い、コミックのEPUB化方法、今後の課題について、テキスト&グラフィックス研究会で取り上げたい。
(JAGAT 研究調査部 千葉弘幸)
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