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ルビは文字数が多くなるため、親文字からはみ出す場合が多い。その場合は、一定の方針のもとに対処されるべきである。
ルビの文字サイズを親文字の1/2とした場合、ルビの字数が3字以上となると、親文字からルビがはみ出す。この親文字からはみ出したルビは、親文字の前後に配置する文字や記号に掛けてよいか、それとも掛けてはいけないのか。
ルビがどの文字または語に付くのかにもよるが、前後の文字にルビが掛かることにより誤解を与えないかどうかが第一の問題となる。また、読みやすさや、見た目のバランスも考慮する必要もある。
親文字の前後に配置する漢字と仮名へのルビ掛けについては、次のような考え方がある。
(1)漢字には掛けてはいけないが、仮名(平仮名及び片仮名)にはルビ文字サイズで全角まで掛かってよい。
(2)漢字及び仮名(平仮名及び片仮名)にはルビ文字サイズで二分まで掛かってよい。
(3)漢字及び仮名(平仮名及び片仮名)にはルビを掛けない。
親文字の前、または後ろの漢字にルビを掛けないのは、誤読を避けるためである。平仮名や片仮名にルビ文字サイズで全角までルビを掛けても、一般にルビを付ける親文字は漢字であるので、誤読される恐れは少ない、という考えからである。
しかし、平仮名の親文字に片仮名でルビを付ける例もあるので、その場合は誤読の恐れがある。
漢字及び仮名(平仮名及び片仮名)にはルビを掛けない、という方法は、誤読を避けるという点ではメリットがあるが、字間が必要以上に空いてしまう、という問題がある。
また、平仮名ルビと片仮名ルビでは、その扱いを変え、平仮名ルビでは親文字の前後の仮名にルビを掛けてよいが、片仮名ルビでは親文字の前後の仮名にはルビを掛けない、という方法で処理している例がある。これは、片仮名ルビについては、親文字に仮名が使用される場合もあり、また、一つのまとまりとしての扱いを重視した考え方である。
漢字や仮名以外の文字・記号にルビを掛けてよいかどうかは、誤読されないか、あるいは見た目のバランスがよいかどうか、といったことから考えていくことになる。
親文字をくくる括弧類については、ルビ文字サイズで全角まで掛かってよい、とする例があるが、特に始めカギ括弧は、あまり見た目のバランスはよくない。そこで、親文字の後ろの終わり括弧類にはルビは掛かってよいが、親文字の前の始め括弧類には掛けない、掛けてもルビ文字サイズで二分までとする考え方もある。
親文字をくくる括弧類へのルビ掛けの例を図1に示す。ルビ文字列と親文字の中心を揃える方法で、かつ仮名へはルビ文字サイズで全角まで掛かってよい方法での配置例である。
親文字の前に配置する終わり括弧類、または親文字の後ろに配置する始め括弧類と、親文字との字間は原則として二分アキである。このアキにルビをはみ出させても誤読の恐れは少ない。そこで、この二分アキにルビ文字サイズで全角までルビを掛けることができる。ただし、行の調整処理で、この字間が二分より狭くなっている場合は、掛けてよい量は、その狭くなったアキまでである。
(図1)
親文字の後ろの句読点にルビを掛けても、誤読される恐れはないので、ルビ文字サイズで全角までルビを掛けることができる。また、括弧類と同様に、親文字の前の句読点との間には二分アキがあるので、ここにルビ文字サイズで全角まで掛けることができる。ただし、行の調整で、この字間が二分より狭くなっている場合、掛けてよい量は、その狭くなったアキまでである。
読点へのルビ掛けの例を図2に示す。ルビ文字列と親文字の中心を揃える方法で、かつ仮名へはルビ文字サイズで全角まで掛かってよい方法での配置例である。
中点類(・;:)も誤読される恐れがないので、これにもルビをルビ文字サイズで全角まで掛けることができる。ただし、中点類は字幅を半角(二分)と考えると、その前後に四分アキを保持しており、行の調整処理で、この四分アキは詰められる場合もある。詰められた場合は、その分だけルビがはみ出しできる量が減ることになる。
全角ダーシ(―)、3点リーダ(…)、2点リーダ(‥)にも、ルビ文字サイズで全角までのルビ掛けを認めている例が多い。
行中の全角アキには、一般にルビ掛けは認められている。ところで、段落を改めるために改行した場合、通常は全角アキにしている。この箇所は版面または段の領域の内部であるとして、その箇所へのルビ文字サイズで全角までのはみ出しを認める考え方と、あくまで行頭であるとして、ルビのはみ出しを認めない考え方、とがある。
引用などで字下げした場合、一般には引用の行頭からのはみ出しはしないが、詩などを字下げして引用した場合などでは、字下げの領域にルビ文字サイズで全角までルビをはみ出す処理を行っている例もある。
本文は縦組か横組か、ルビを肩ツキ・中ツキのどちらにするか、さらに、ルビの字数が多い場合のルビのはみ出しをどうするか、他の文字等への文字掛けをどこまで認めるか、平仮名ルビか片仮名ルビで扱いを変えるか、行中と行頭・行末で配置方法を変えるかどうか、といった事項についての方針を組み合わせて、ルビの配置処理方針を考えていく必要がある。
電子書籍では、縦組でも、横組でも読む可能性があるかもしれない。となると縦組でも、横組でも問題のない方法を工夫する必要もでてくる。
(図2)