本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
震災からの復興を試した2012年。リーマン・ショック、電子書籍、東日本大震災と、近年のいくつもの激震の影響はようやく薄れ、あるいは明確化し、歩むべき方向は決まってきた。2012年の状況を振り返る。
■2010年:リーマン・ショックの影響がようやく薄れる
現時点で「工業統計」は2010年までの出荷額を公開しており、2010年は前年比2.3%減の6.17兆円と6兆円台を保った。2010年は前年のリーマン・ショックで未曾有の経済危機となった2009年の流れを引き継いで始まった年である。印刷会社も2010年の年初は厳しかったものの、リーマン・ショックから丸2年以上が経過した秋以降は、JAGAT調べの印刷会社売上高も26カ月ぶりのプラスを記録するなど、年末にかけて持ち直していった。
■2011年:東日本大震災からの回復を試す
2011年は2月まで、印刷会社の主力製品といえる商業印刷が底打ちの気配で売上高は堅調に推移していた。大震災は、こうした回復基調に大打撃を与えた。設備の損壊、紙など原材料の調達難、電力の制限など、事後的な影響が追い討ちをかけた。震災の影響は月を追って薄れたが、夏にギリシャ発の欧州金融危機本格化、秋にはタイの大洪水などがあり、印刷産業もこうした世界的な景気減速の影響を免れず、印刷需要は抑制されつつも年末に向けて緩やかに回復した。
■2012年:年前半は堅調、夏以降は失速、年後半に持ち直し
2012年は、復興需要に牽引される形で年前半は堅調に推移した。首都圏折込広告の出稿枚数は2月から6月まで5ヵ月連続の前年比プラスで推移した。しかし、近隣諸国との領土問題は貿易関係にも影響して次第に国内経済は減速し、政治の混迷も加わり景気後退懸念がささやかれるに従い、年後半は多くの印刷会社もその影響を受けた。衆議院の解散期待、政権交代で景気対策が進む期待が高まると、株価は上昇、為替は円安に振れて、11月以降は印刷会社にも好影響が波及した。
■2012年:景況感、印刷会社経営者の声
年初から年度末の3月にかけては「稼働率が上がっている」、「工場が満杯状態」など、近年になく多忙を伝える声が散見された。しかし以降は、「5月からはあまり動きがなくなった」など、春以降は徐々に仕事の動きが鈍り、近隣諸国との領土問題が経済に悪影響を及ぼすに従い、印刷会社でも「価格競争が厳しい」、「消費税や財政問題などの影響で節約志向」といった声が増えた。「昨年は震災で悪過ぎたわけで今年が良いわけではない」と冷静な指摘も多かった。
■2012年:主要印刷製品動向
2012年の広告市場は堅調に始まり、春まで順調に推移したが、夏以降は中韓との関係冷え込みが広告市場にも強く影響したようだ。特にビジネスユースの印刷物はこうした景気経済の影響を受けやすく、印刷製品の中でも折込チラシなど商業印刷物は広告市場の動向に影響を受ける形で推移し、夏以降に急減速し、年末は選挙などを経て回復に向かったようだ。出版印刷物はミリオンセラー不在という低調な出版市場の影響を受けた。紙器・パッケージは昨年に続き堅調だったようだが、紙器・パッケージに関しては昨年震災特需の反動減も一部で見られた。
■2012年:世界最大の印刷機材展"drupa"
2012年は世界から40万人が来場する世界最大の印刷機材展示会drupa2012(ドイツ)が開催された。drupaは世界から集結する最新鋭の印刷機材を通じて印刷技術の近未来を映し出すことで知られる。今回はオフセット印刷とデジタル印刷の融合、全工程におけるITの高度な組み込み、印刷後の加工技術、デジタル印刷機などに革新が多く見られた。印刷通販やWeb to Printなど新たな受注インフラの構築も本格化、印刷ビジネスはデジタル活用新時代を迎えている。
■2013年:経済と印刷、デジタル
2012年は我が国をはじめ、米国・中国・ロシア・フランスなど主要各国でトップや政権の再任・交代があった。主要各国のフレッシュな政権により、政権末期で停滞していた政治案件や経済対策の解決が進められていくだろう。欧州は金融危機の長期化、米国は財政の崖を控えるが、米国と中国は底打ち機運で、両国が世界経済をけん引して我が国にも好影響を及ぼす構図になる可能性が高い。2013年も印刷需要はこうした景気経済との連動や電子書籍などデジタル化の影響を受けて増減する。
■2013年に向けて:印刷経営のスタンス
印刷会社も印刷以外の受注が増え、印刷受注の減少が必ずしも売上高の減少を意味しない場合が増えてきた。ソリューション志向は当たり前になって、どのようなソリューションを提供すれば顧客の役に立てるか、そのためには人材と設備といったリソースをどのように配分するか、どのようなコンテンツを握るべきか、印刷各社が各様に答えを見つけ始めている。リーマン・ショックと電子書籍実用化を経て、ソリューション視点に切り替わった印刷会社から順に再成長を試していく局面を迎えている。
<関連セミナー>
■2013年1月30日開催 研究会セミナー
「印刷ビジネスの動向と展望2012-2013」
■2013年2月開催 PAGE2013カンファレンス
2月6日 「2013年のメディアと印刷市場展望」
2月8日 「印刷会社の地域活性ビジネス2013」
<関連書籍>