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親文字からのはみ出し処理には、さらにいろいろなケースがある。
1文字の親文字に3字以上のルビが付く場合、ルビの文字サイズを親文字の1/2とすると、ルビは親文字からルビがはみ出す。この場合の処理方法はいくつかある。
活字組版でよく行われていた方法(コンピュータ組版でも行われている)は、親文字1字にルビ1字の際に肩ツキを選んだ場合で、後ろへのはみ出しを優先する方法である。この方法では、文字の前後に配置する文字種により、親文字とルビ文字列の位置関係は変化する。
最近よく見かけるようになったのが、ルビ文字列と親文字の中心を揃える方法である。この方法では、親文字の前後に配置する文字種により、親文字とルビ文字列の位置関係は変化しない。
なお、行中と行頭・行末では、処理が異なる場合があるが、まずは行中の問題から解説する。
後ろへのはみ出しを優先する方法では、後ろの文字に掛けてよい量だけまずルビを掛け、それで処理できない場合、前の文字に掛けてよい量だけルビを掛けてはみ出させ、それでも処理できない量は、前及び後ろに適当にアキを追加する方法である(簡単には前後に均等にアキをとる)。
1字の親文字に3字又は4字のルビが付く例を図1に示す。この例は、親文字からはみ出したルビを漢字には掛けないが、仮名にはルビ文字サイズで全角まで掛けてよいという方針である。
図1
図1のルビが3字で後ろへのはみ出しを優先する処理では、親文字の前後が仮名の場合は、後ろにはみ出し、前が仮名で後ろが漢字の場合は前にはみ出す。前が漢字で後ろが仮名の場合は、前後が仮名の場合と同じになる。
前後が漢字の場合、前後に均等にアキをとるのであれば上段のように親文字の前後が四分アキとなる。しかし、2段目の例のように親文字の後ろを二分空ける方法も行われている。
活字組版では、その場で適当な方法で処理できるが、コンピュータ組版ではルールに従って処理する必要がある。もちろん、コンピュータ組版でも個別箇所ごとに適切な方法で配置する処理もできるが、コンピュータ組版では自動処理するのが望ましい。自動処理で、2段目の例のような処理を行うためには、ルビを前後の文字に掛けることができない際には、前後に平均ではなく、二分(又は四分)単位で、後ろ、次に前、その次は後ろ、…、といったルールが必要になる。
ルビが4字となると図1のように、親文字の前後が仮名の場合は前後にはみ出し、前又は後ろが漢字の場合は、前後の文字に掛けることができない量を前後に均等にアキをとる方法で親文字の前後を四分アキにし、前又は後ろの仮名にルビを1字掛ける。
前後が漢字の場合は、親文字の前後を二分アキにする。
なお、4段目のように、前又は後ろが漢字の場合、親文字の前後を二分アキにする方法も行われている。
1字の親文字に3字のルビが付く場合で、ルビ文字列と親文字の中心を揃える方法の配置例を図2に示す。ルビが4字の例を図3に示す。
いずれも上段が親文字からはみ出したルビを漢字には掛けないが、仮名にはルビ文字サイズで全角まで掛けてよい方針、2段目が仮名と漢字にルビ文字サイズで二分まで掛けてよい方針、3段目は仮名にも漢字にもルビを掛けない方針の例である。
1段目の例は、前と後ろの文字種が異なると、親文字の前後のアキが平均にならない。3段目の仮名にも漢字にもルビを掛けない場合は、平均に空くが、必要以上に空いてしまうという問題がある。2段目のルビ文字サイズで二分まで掛ける方法はバランスがよいが、漢字にルビが掛かるという問題がある。それぞれに良い点と問題点がある。
行頭と行末のルビの配置では、次のような考え方がある。
(1)行頭では親文字の先頭を行頭に接するように配置し、行末では親文字の末尾を行末に接するように配置しなければならない。
(2)親文字を行頭又は行末に接して配置する必要はなく、ルビのはみ出しがあった場合、行頭では親文字の前、行末では親文字の後ろが空いてもよい。この場合、行頭ではルビ文字列の先頭が行頭に接し、行末ではルビ文字列の末尾が行末に接することになる。
親文字とルビ文字列の中心を揃えて配置する方法では、ルビの字数が3字以上の場合、(2)では、中心を揃えて配置できるが、(1)の方法ではルビと親文字との配置関係を変える必要がある。後ろへのはみ出しを優先する場合で親文字の前後を空けるときは、(1)では、行頭では必ず親文字の後ろ、行末では親文字の前を空けるが、(2)では、行頭では親文字の前、行末では親文字の後ろを空ける方法も許容できる、ということになる。
このように、親文字からルビがはみ出す際の配置方法には複数の処理法があり、なかなかやっかいである。