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角川グループの電子書籍ストアである「BOOK☆WALKER(ブックウォーカー)」は、他の出版社とは異なるビジネスモデルで成功している。同社の安本常務に特徴や今後の方向性について伺った。
これまでの出版社では、基本的に紙の本は取次を通して書店で売ってもらい、電子書籍はコンテンツプロバイダーという立場でいろいろなストアに出していたので、ユーザーのデータが直接自社には入ってこなかった。そこでBOOK☆WALKERでは出版社としての立場と電子書籍ストアとしての立場を両立させる独自のモデルを考えたのである。
同社の安本常務は、「出版社がWeb サービスのB2C モデルをやったらユーザーの属性を含めて、どのような作品を購入するか、生のデータを作品作りにフィードバックできるのではないかという魅力がありました。プラットフォームづくりには投資も必要でリスクもあるがチャレンジしたのです。」という。
電子書店として総合書店化することを考えたときに角川書店単体では難しかった。そこでまずは、角川グループとして直営の電子書籍配信プラットフォームとて立ち上げた。グループにはそれぞれ強みがあって、ライトノベル、コミック、雑誌、文芸、新書、実用書、歴史物などあゆるジャンルを網羅している。一つになることで専門店の集合体として、幅広いラインアップが可能になった。
その中でもサイトの絵作りに特徴を出そうとしたときにライトノベルが強みとしてあった。ライトノベルとはアニメやキャラクターものに近い小説であるが、このジャンルが業界でも伸びている。また、市場も広がっており、角川グループをけん引する柱にもなっている。同社の売り上げの51%はライトノベルであり、BOOK☆WALKER はライトノベルに特化したサイトもいえる。
ユーザーの男女比は圧倒的に男性が多く、これもライトノベルの特性でもある。電子書籍ストアはストアの特徴によって、ターゲット層がまったく異なるいうことが見られるが、BOOK ☆ WALKER は25~30 歳、30 歳~35 歳の層に強い。
現在BOOK☆WALKER上で電子コミックとして配信している漫画「せいふく!」は、新作配信ごとにコミックランキング上位に入る大人気作へ成長した。
売り方としては、1 話32 ページごとの作品で価格は85 円と手頃である。これも表紙の絵柄によって売れ行きが変わる。売れ行きのよいときには、同時にバックナンバーが売れるといった現象も起きている。例えば5 話まとめて売るよりも、単品85 円を1 話ごとに定期にリリースしたほうが、電子書籍には向いている。
本の売り方ということでは、電子書籍ではこれまでできなった戦略的な売り方ができる。また、アーカイブ作品の掘り起しのようなものを電子でやると、紙の書籍を持っているユーザーが電子も大人買いのようにまとめ購入する。
現状、実際にはまだ電子が紙の市場を脅かすほどにはなっていない。おそらく1 作品では紙の本の売り上げに対しては5%以下である。あとはきっかけの部分なので、これも工夫次第でまだまだ伸びる。
安本氏によると、今後は作品の配信にとどまらず、斬新なサービスを提供し、新しい読書スタイルを提案していきたいとのことである。また普段書店であまり本を買わない人にも、電子書籍を購入してもらうことで出版全体の市場を広げ、活性化のための取組みとして書店に人を向かわせる施策の必要性も感じている。
「これからはおそらくコンテンツごとに新しいアイデアがどんどん出てくると思います。本を作るだけでなく、デジタルならではの表現方法や作品の作り方も変ってくるかもしれません。作家とともにどのように売るのかを一緒に考えていく。それは出版社だからこできることであり、そこがわれわれの強みであるともにコンテンツの価値をどう生かすかが一番大事な要ではないでしょうか」(安本氏)
(『JAGAT Info』2013年1月号より一部抜粋)
page2013基調講演:BOOK☆WARKER安本氏がスピーカーとして登壇します。
電子書籍2013---国内プレーヤー勢揃い---
2月6日(水) 10:00-12:00
会場:サンシャインコンベンションセンター ワールドインポートマート5F
日本を代表する国内電子書籍プレーヤー達がどのように考え、どのように行動していくのか?検証したい。