本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
ヒューマンエラーによる事故・ミスは後を絶たない。職場においても人間はミスをしながら働いている。取り返しのつかない事態になる前に手を打つ必要があるだろう。
ヒューマンエラーとは、間違い(ミス)のことであり、JIS(日本工業規格)では、「意図しない結果を生じる人間の行為」とある。よって、人為ミスとも呼ばれる。普段の生活の場面では、傘を置き忘れたり、電気を消し忘れたりする軽傷で済むが、運輸や医療関連の現場では人命にかかわる事故になってしまう。
印刷業界でもトラブル、事故は数多く発生している。これは、印刷物が一点一点のオーダーメイドのため、標準化が難しいことや製造工程が複雑であることが要因だろう。私自身も印刷会社のプリプレスを任されていたころ、数十名のオペレータが昼夜作業をしている環境のなか、毎日のように何らかのトラブルが発生していた。その大部分はヒューマンエラーいわゆるオペレータの過失が原因によるものであった。
なぜ、トラブルや事故が起きてしまうのだろうと必死に考えていた。スキルの有無や性格的な向き不向きもあるのは当然である。例えば、単語や漢字を知らない人が文字入力のオペレータであったり、色の差が分からない人が画像処理オペレータでは、効率が悪くなり、危険度が増すのは当たり前である。
しかし、適材適所がうまくいくとは限らず、限られた人材で勝負するしかない。例えば、電車はレールが敷かれ安全装置が設置されているので事故がない(若干あるが・・・)。一方、自動車は運転手が自由に方向、速度を決められるので、その自由度から電車に比べ事故が圧倒的に多くなるのである。
それでは、印刷会社も電車のようにレールを敷きつめルールを徹底することにより、印刷事故を0(ゼロ)に近づけられるだろう。そのためには、オペレータが作業しやすい環境、すなわちレール作りと、運転者であるオペレータ自身のスキルアップ、人材育成が重要である。
具体的に、レールを敷くということは、マニュアルを作成したり、オペレーションの標準化、ルールを徹底することである。実際トラブルを分析すると、圧倒的にヒューマンエラーが多いのが現実である。オペレータは、自由に操作できるので、できるだけ標準化した作業に近づけ、ルールを徹底することが必要になる。「言うは易し行うは難し」ではあるが、とにかくレールを敷かない限り事故は削減できない。