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印刷ビジネスには、印刷物設計から製造、納品に至るまで、製造業として効率良い生産体制と品質管理が不可欠。仕事のコーディネーションと顧客満足を維持する人材育成が重要だ。
■自社のビジョンに沿った計画的な教育訓練
日本経済新聞社がまとめた「人事トップが求める新卒イメージ調査」では、採用したい新卒人材像として、「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「主体性」「行動力」が挙がった。上司や同僚と上手にコミュニケーションし、仕事を円滑に進め、新しいことに果敢にチャレンジする人材が求められている。
2013年3月卒業予定者の大卒求人倍率は1.27倍と、前年の1.23倍よりわずかに上昇した(リクルートワークス研究所調べ)。「製造業」の求人総数は26.1万人と、前年の27.5万人より1.4万人減少(-5.2%)している。
今年の就職活動の特徴は「身の丈就活」と言われている。企業の採用活動の開始時期が例年よりも遅く、活動期間が短くなったため、人気のある企業だけではなく中小企業への就活も熱心に取り組む姿が見られた。
一方、採用側としては、膨大な時間、そして費用をかけて採用した新人になるべく早く即戦力になってほしいという想いがある。
ところが、中学、高校、大学の卒業後、3年以内に離職する割合は、それぞれ約7割・5割・3割、つまり、若者の離職率は「七五三」の割合となっている(厚生労働省 若者雇用関連データより)。
その原因を「採用の失敗、雇用のミスマッチ」と決め付けていないだろうか?企業において最大の経営資源は人材である。「当社には人材がいない」と嘆く前に、戦力として活用するために「どのように人を育てるか」が重要である。
そして、それは、その場限りの教育や研修、欠員補充のためだけの人事異動であってはならない。自社のビジョンに沿った計画的な教育訓練であるべきだ。
■仕事のコーディネーションと顧客満足の維持
JAGATでは、2012年9月~10月に「印刷メディアコーディネータ養成講座(全6回) 」を新たに開講する。15年間続いた「プリンティングコーディネータ養成講座」を改訂したもので、入社3~5年ほどの方向けに、これからの印刷ビジネスを担う人材を早期に発掘し、育成するものである。
営業、製造、管理など部門を問わず業界人としての基礎知識を体得する総合講座で、印刷工程とDTP制作の基礎を習得する。
本講座では、「著作権の基本と企画におけるトラブル等」「印刷企画、編集準備」「企画コンセプト・デザイン表現・色彩心理」「色の基礎」「HTML、XML、PDF、各種フォーマット、DTP組版設計のディレクション」「入出力、ワークフロー、カラーマネジメント」「刷版、校正、印刷(材料)、加工、品質管理」「出力方式、デジタル印刷」「IT」など12カリキュラムを42時間で学んでいただく。
近年、印刷物作成の工程を見ると、営業対応とプリプレス工程、そして印刷・製本加工工程という二つの断絶してしまった流れがある。この流れを取りまとめ整流化していかなければ、「良い印刷物」を作ることは難しい。さらに印刷物だけでなく関連メディアとのリンクを含めると、その範囲は広大なものとなり、この領域をそれぞれの工程間でカバーするのは不可能だ。そこで求められるのは印刷の基礎的なセオリーを身に付け、さらに新技術や新領域にまで知識を広げたコーディネータが、この広いメディア領域(横軸)と印刷物などの作成工程(縦軸)をカバーし、整流化していくことだろう。
ブラックボックス化した流れは止められないと同時に、断絶化した工程間でお互いをサポートし合うことにも限度がある。このような横軸・縦軸の空間で随時仕事をコーディネーションし、顧客満足を追求する役割が「印刷メディアコーディネータ」なのである。(2012年8月号『JAGATinfo 』より)