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社会情勢の推移とともに若者の就職に対する意識も変わりつつある昨今、社会人としての基盤形成に不可欠な入社時における基礎教育の大切さがより求められてきている。
来年度の教育計画を考えるにあたり、新入社員の傾向を把握し、早期戦略化、定着化を促すためにどのような育成プランに取り組むべきか。 JAGATでは、2010年12月7日、「人と会社を活かす人 材育成」と題し、人事教育担当者向けに新人教育を考えるためのセミナーを開催した。
第1部では企業の人材教育やキャリアカウンセリングを専門とされ、求職者の就職相談の経験も豊富な猪俣恭子氏(コーチングプレス㈱代表)より、新入社員世代に共通する感覚・考え方の特徴に触れつつ、彼らとの関わり方、仕事 への意欲の高め方などについてお話いただいた。
数多くの就職相談やキャリア支援を通して若い世代との交流の機会が多い猪俣氏は、総じて「ゆとり世代」とひと括りで論じられがちな新人世代も、ひとりひとりの資質を見極め、個別の対応が重要であると指摘する。その上で安定志向が強く、失敗を恐れがちだといわれる彼らをどう受け入れるか、社会人としてのギャップを埋め、戦力化させるために必要な環境づくり、育成のポイントを多彩な事例を交え、解説した。
第2部は、印刷会社の現職人事教育担当者の立場から共同印刷(株)人事部教育課課長の上妻祐司氏より、独自の人材育成システムを実際に構築・運用された経験をもとに、新入社員研修の各プログラムの実例を紹介しながら、育成にまつわる現場の経験談を語っていただいた。
上妻氏がマネジメントする新入社員教育は、先輩社員が指導員、OJTリーダーとして研修、職場ともに深く関与している点が特徴である。新入社員研修から各種のフォローアップ研修にいたるまで充実したプログラムが用意されている他、指導する側の先輩社員向けの事前研修にも力を入れている。上妻氏は「新人教育は、教育部門だけの仕事ではなく、先輩・上司の影響力が大きい」と語り、さらに「職場で実践した結果を研修で再評価することによって、行動の変化が定着する。実践の成果をマネジメントすることが研修」とフォロー研修によるフィードバックの大切さを強調した。
当日、参加企業各社の人事教育担当者から「新人教育において課題だと思われること」をアンケート形式で提出していただいたが、「若い世代のモチベーション維持のためのヒントがほしい」「現場によって差が出るOJT教育をどう解決するか」「知識だけでは難しいコミュニケーション能力を高めるための育成方法を知りたい」などの様々な意見が寄せられ、新人育成のプロセスで生じる課題も一様ではない。
新入社員の育成は、自己啓発へ導く体系立った研修やOJT教育ももちろん重要だが、その範疇だけにとどまるものではなく、彼らを受け入れる側の職場全体の取り組みが問われてくる。仕事への責任感やモチベーションが培われるのは職場であり、先輩・上司が一体となって実践モデルをつくっていくことが、新入社員の成長と定着化を促すために不可欠であろう。
■関連情報
2011年度新入社員研修