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品質管理に関わるコストは増加の一途をたどっている。一方で、ひとたび印刷事故を起こしてしまえば、刷り直しのコストだけでなく、得意先からの信用という大きな代償を払うことになる。
得意先からの印刷物への品質要求はシビアさを増し、「乱丁・落丁本はお取り換えします」では通用しなくなっている。印刷物の製造工程においては、入稿データのプリフライトチェックにはじまり、訂正箇所がきちんと直っているかのチェック、プレートの検版、そして最終印刷物や加工物の確認など、多岐にわたるチェック項目やチェックポイントが必要になる。事故防止の取組みとして、刷り本の全数検査も可能な検査装置を導入したり、品質管理の専任者ないし、専任部門を設置している印刷会社も多い。このように品質管理に関わるコストは増加の一途をたどっている。一方で、ひとたび印刷事故を起こしてしまえば、刷り直しのコストだけでなく、得意先からの信用という大きな代償を払うことになる。
こうした傾向は印刷業に限らず製造業一般に共通しており、増大する品質管理コストをどのように評価し、適正水準をどう求めるべきかという課題に対して「品質原価計算」という考えかたがあるので、それを紹介したい。
一般的に品質原価計算とは、より低い原価で高い品質を達成するために、製品の品質を維持・管理するために発生している原価を集計して、これを分析するための原価計算のことをいう。
品質原価の分類
品質原価計算においては、予防-評価-失敗アプローチといわれる手法が用いられる。この手法では、品質原価は品質適合コストと品質不適合コストの二つに分けられる。
(1)品質適合コスト
品質適合コストとは、製品の品質不良が生じないようにするために必要な原価のことで品質適合テストはさらに、予防原価と評価原価に分けられる。
①予防原価:製品の品質不良の発生を予防する活動にかかる原価のこと
②評価原価:製品の品質不良の有無を発見するための活動にかかる原価のこと
(2)品質不適合コスト
品質不適合コストとは製品の品質不良が発生したために必要となる原価のことで、品質不適合コストはさらに、内部失敗原価と外部失敗原価に分けられる。
①内部失敗原価:製品の出荷前に不良品が発生した場合に生じる原価のこと
(ヤレ版、ヤレ紙のコストなど)
②外部失敗原価:製品の出荷後に不良品が発生した場合に生じる原価のこと
(製品回収、刷り直し代など)
品質原価計算の目的
品質適合コストと品質不適合コストはトレードオフの関係にあり、積極的に品質適合コストをかければかけるほど、品質不適合コストの発生を少なくすることができる。反対に、品質適合コストを節約すると、品質不適合コストが増大する。このトレードオフ関係を考慮して、品質適合コストと品質不適合コストの総額が最少になるような最適点の品質原価を求めていくことが、品質原価計算の目的となる。
(JAGAT 教育コンサルティング部 花房 賢)