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「速乾印刷」とも呼ばれるインキ乾燥時間を短縮した印刷は、短納期対応だけでなく、さまざまな効果を生み出す。
■オフセット印刷では、多品種・小ロット・短納期の傾向が年々大きくなっている。
オフセット印刷では、印刷版の作成やインキの乾燥時間などを要するため、その対応時間には限界がある。両面印刷であれば、インキが十分に乾燥しなければ、裏移りのトラブルが発生する。したがって、片面印刷後、数時間から一晩置かなければ、反対面を印刷することができない。
インキの乾燥時間をいかに短くするかが、短納期対応のポイントである。
■昨今、生産性や効率化、品質の向上に加え、短納期対応(速乾)のために、UVインキを使った印刷に取り組むことが増えている。
UVインキは、UV光を照射して硬化(乾燥)する方式であり、紫外線硬化型インキとも呼ばれている。印刷時に強制的に乾燥させるため、時間を置かずして反対面の印刷もでき、その後の加工にもすぐに取りかかることができる。印刷品質の安定につながる。裏付き防止のためのスプレーパウダーも不要である。
製版機器や後加工機を印刷機の近くに設置することができ、作業効率のアップや省力化にもつながる。また、インキ乾燥時に溶剤、排ガス(炭酸ガス)が発生せず、環境ホルモン、重金属が含有されていないなど、環境面のメリットも多い。
紙以外の媒体にも印刷ができるため、被印刷物の種類の拡大にもつながる。
その一方、脱墨特性が悪いことや印刷機にUV光源を設置すること、UV光源(従来のキセノン光源など)によってはオゾンが発生するため脱臭装置の設置が必要なこと、UVインキ自体が高価格であることなど、課題もある。実際には、これらのデメリットよりメリットを重視して導入しているケースが多い。
■通常のオフセット印刷であっても、インキを薄膜にして水を絞る印刷を行い、乾燥時間を短縮するという手法がある。
理屈では普通のことだが、通常は刷りやすさを優先して、湿し水を多めにすることがほとんどである。
水を絞ることに適した版材がある。砂目の表面の凹凸を浅く滑らかにし、細かで均一の砂目構造にすることで保水性を向上させている。その結果、最小限の水・インキ量(インキ被膜)で印刷をおこない、油性インキでの速乾印刷を実現できるわけである。
コストの比較的安価な油性インキで、インキ使用量も削減でき、水によるドライダウンも抑えられる。同時に、インキの明度も彩度も保持できる。
水やインキを限界まで絞ること、つまり薄膜の印刷は、水、インキが少ないがための印刷管理が必要となることも理解しておかなければならない。
また標準印刷のように決められたベタ濃度がある場合、薄膜にした時にその規定のベタ濃度が保てるのか大きな課題となる。
■こうした厳しい印刷管理と引き換えに、乾燥時間を短縮し、短納期対応や品質向上を実現する取り組みを考えても良いのではないだろうか。
(JAGAT 研究調査部 福原節寿)
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