本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
熟語ルビの利用と配置。
複数の漢字で構成される熟語に付けるルビの配置処理については、次のような方法がある。
(1)熟語を構成する個々の漢字の読み方を尊重し、個々の漢字の読み方に即して付ける。いってみればモノルビによる処理方法ともいえる。
(2)熟語としてのまとまりを重視し、親文字列全体に対応してルビ文字列を配置する。配置処理方法としてはグループルビと同じになる。
(3)熟語を構成する個々の漢字の読み方を尊重しながら、かつ、熟語としてのまとまりを重視して配置する。なお、複合語や成句などで熟語の範囲が問題になるが、語全体を1つの熟語として扱うか、2つの熟語として扱うかは、編集段階での判断による(指定による)。
前述した(3)の方法が熟語ルビである。なお、熟語ルビという用語は、JIS X 4051の2004年の改正(第3次規格)で規定された。
熟語ルビの場合、熟語を構成するそれぞれの漢字に付くルビが2字以下であれば、各漢字に即して付けることができるので、(1)の方法と同じになる。図1に肩ツキと中ツキの配置例を示す。
問題となるのは、熟語を構成するそれぞれの漢字に付くルビが3字以上のものを含んでいる場合である。この場合、熟語を構成する個々の漢字の読み方を示すルビが、熟語を構成する他の漢字にも掛かることを許容し、熟語としてのまとまりを保つようにルビを配置する。
この配置方法はいくつかあるが、JIS X 4051で規定している方法は、グループルビと同じ配置方法である。なお、グループルビと異なり、熟語ルビでは、各親文字間で2行への分割が可であり、JIS X 4051でも、その方法が規定されている。
ただし、分割する場合、各親文字とそのルビの対応を維持する必要がある。図2の“飛翔”のように、行中では、親文字の“飛”とルビの“ひし”、“翔”とルビの“よう”が対応しているが、2行に分割する場合は、親文字の“飛”とルビの“ひ”、“翔”とルビの“しよう”が対応するように変える。
図1
図2
活字組版でも、熟語を構成する個々の漢字の読み方を尊重しながら、かつ、熟語としてのまとまりを重視する方法で配置する例が多かった。また、コンピュータ組版でも、ほぼそれと同様な配置法が採用されている例がある。
活字組版ではルールはややあいまいな点もあり、個々のケースで臨機応変に処理していた例があったが、コンピュータ組版の自動処理を考慮した場合、一定のルールに決める必要がある。
縦組の肩ツキで、後ろへのはみ出しを優先する場合の条件の例としては、次のようになる。
(1)熟語を構成する個々の漢字の読み方を尊重し、個々の漢字の読み方に即して付けることが可能な場合は、図1のように個々の漢字とルビを対応させる。
(2)個々の漢字に対応させる場合、漢字1字でルビが1字の場合は、肩ツキとする。
(3)熟語を構成する個々の漢字の読み方を尊重しながら、かつ、熟語としてのまとまりを重視して配置することから、熟語を構成する他の漢字にルビ文字サイズで全角までルビは掛かってよい。
(4)熟語を構成する他の漢字にルビを掛ける場合は、後ろへのはみ出しを優先する。
(5)ルビを付ける熟語の前又は後ろの平仮名、片仮名、その他の記号などに、ルビはルビ文字サイズで全角まで掛かってよい。基本的な考え方はモノルビと同じである。これは、できるだけ不必要に字間が空くことを避けるためである。ただし、熟語ルビの前又は後ろの熟語とは別の漢字に、親文字からはみ出したルビを掛けないようにする。これは主に誤読を避けるためである。
(6)親文字からはみ出したルビを前後の仮名等に掛ける場合、後ろへのはみ出しを優先する。この場合、(6)よりは(4)の方を優先する。
(7)熟語内および熟語外の文字にルビを掛けることで処理できない場合は、熟語の親文字間または熟語の前後を空ける。
この場合に字間を空ける親文字は、対応するルビが3字以上の親文字とし、字数に応じて、その親文字の前後を平均に空ける。
同一の熟語ルビ内の他の親文字にルビを掛けることで解決できないかを調べ、その方法だけで処理できない場合、次に親文字列の前後の文字などにルビを掛けることができないかを検討し、さらに、それでも処理できない場合は、親文字列の字間や親文字列の前後を空ける処理を組み合わせてルビの配置位置を決めることになる。親文字列の前後の文字種により、親文字とルビの位置関係が変わってくる。
こうした条件に従った配置例を図3に示す。3段目は、親文字列の前が漢字の例である。
図3
横組の場合、漢字1字でルビが1字のときは、中ツキとする。熟語を構成するそれぞれの漢字に付くルビが3字以上のものを含んでいる場合も、可能である限り、熟語の親文字列全体に対し、ルビ文字列を左右中央にした方が望ましい。
そこで、このような配置方法を採用するのであるならば、語を構成する他の漢字にルビ文字サイズで全角まででなく、ルビ文字サイズで全角半まで掛かってよい、とした方がよい。
また、左右中央ということを重視することから、熟語ルビの前又は後ろの文字にルビを掛ける場合、仮名だけでなく、漢字にも、ルビ文字サイズで二分まで掛かってよいとした方が望ましいであろう。字間を空ける必要がある場合も、親文字列からのはみ出しがルビ文字で全角のときは、親文字列の前後を空けるとした方がよいであろう。
縦組でも中ツキとする例があるので、こうした考え方での縦組の配置例を図4に示す。なお、3段目は字間を空ける場合、対応するルビが3字以上の親文字とし、字数に応じで、その親文字の前後を平均に空ける例である。
図4