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drupa2008 で登場した低エネルギーのLED 光源と高感度UV インキによる省エネ型のインキ乾燥システムの導入がオフセット印刷でも使われ始めている。LED 光源と高感度UV インキについて考えてみたい。
従来のUV インキは、油性インキで対応が難しい課題に用いられていることが多い。耐摩擦性、後加工適正、生産性、耐ブロッキング性などの対応を踏まえて限定的にオフセット印刷でUV インキが使用された。従来のUV インクが持つ弱点の多くを払拭できたことで、この数年で300 台弱の高感度UV インキ対応のオフセット枚葉機が稼働している。
高感度UV インキによるオフセット印刷は、通常の印刷用紙への印刷に利用されることが多く、主に生産性向上の目的で使用されている。従来のUV インキのように後加工や素材などを変えて価値を上げることに限定していない。後加工までの全体の工数短縮(速乾性、板取不要、積替えの作業時間短縮)、資材の削減と検品工数の低減(パウダーレスよる効果)などで積極的に製造原価を削減するとともに、さらなる納期短縮、デジタル印刷では対応できないような多種多様な原反への印刷、環境への訴求(Non VOC、ECO マーク)などで収益性を上げる仕組みである。
高感度UV インキは、電力消費の低いLED 使用やUV ランプ1 本のみの使用で、熱の影響を受けやすいフィルムなどの材料へも印刷が可能となり、従来は必要であったオゾンガスの排気ダクトの設備が不要となる。色再現では商業印刷用のインキとしてJapan Color 2011 に対応できている。
油性インキとUV インキの構成では、色材は顔料でほぼ同じである。被膜形成・乾燥・硬化の機構で大きく異なる。油性インキの助剤(ビヒクル)は樹脂(ロジン変性フェノール樹脂いわゆる松脂)、AF(アロマフリー)溶剤、植物油などで構成されている。樹脂とAF 溶剤が酸素と結合しながら紙に浸透していくので、乾燥には数時間が要する。
UV インキは感光性樹脂(分子が複数で構成され固体)とモノマー(分子が一つで液体)、光重合開始剤でビヒクルが構成され、UV 光を照射することで光重合開始剤がモノマーを結合させて硬化する。つまり被膜形成に大きな相違があり、油性インキは乾燥で、UV インキは硬化である。
従来のUV インキの光源にはメタルハライドランプが用いられる。メタルハライドランプ光源は短波長側(200nm)から高波長側(500nm)まで分光分布し、短波長側がオゾンを発生させ長波長側が発熱させる。オゾン濃度が高いと生命の危険性あり環境基準で0.1ppm 以下とされ、排気の設備が必要となる。オゾンレスのUV システムは、短波長側の波長をカットした光源を使用する。
オゾンの発生はなくなるが、光源ランプの表面温度は700~800 度にも達し排気(排熱)ダクトが必要になる。LED 光源は385nm(± 17nm)の単波長なので全体の分光分布で比較すればかなり照射エネルギーは小さくなる。
光沢感も油性インキとほぼ同じ品質に達しているが、光沢計で同じ値が求められるレベルでは難しい。UV 照射前は、光沢値はほぼ同じである。油性インキはゆっくり乾燥するので平滑度が上がりレベリングが良くなり光沢が上がる。UV インキは照射すると表面がすぐに硬化するのでインキ表面がレベリングされないので平滑度(光沢度)は上がらない。したがって最終胴からUV 光が照射されるまでの距離を長くしてインキ表面のレベリングを改善する工夫が必要となる。
(『JAGAT info』2013年7月号)