クロスメディア考現学 (1) メディアビジネス設計で重要なポイント
掲載日: 2013年04月30日
「クロスメディア」というキーワードから想起されるビジネスやサービスの「現在(いま)」を毎月再考していく。
メディアとは、情報表現・伝達手段・手法のこと である。
広義には、コミュニケーションのための社会装置。
メディアが変われば社会が変わり、社会が変わればメディアが変わる。
メディアと社会は 不可分な存在。
調和ある社会に貢献する志 これをもってメディアを開発するべし。
こう私におっしゃったのは、JAGAT 前副会長の和久井幸太郎さんです。
メディアは、いまや、自然と同じくらい、身の周りにあふれています。
みなさんの周りにある「気になるメディア、面白いメディア」って何ですか?「なぜ気になるのか、何が面白いのか」聞いてみたい……そう思い、この連載を企画しました。
最近ギブソンを購入しハマっている、一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 池田 敬二さんに執筆いただきました。(JAGAT 教育コンサルティング部 小須田紀子)
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クロスメディア考現学(1)
印刷業界ではすっかり浸透した「クロスメディア」というキーワードから想起されるビジネスやサービスの「現在(いま)」を毎月再考していくのが本連載の試みです。
iPhoneアプリの大辞林(三省堂)で「クロスメディア」を引いてみると「さまざまなメディアを戦略的に組み合わせること。メディアミックスが各メディアに予算を振り分けるだけであるのに対し、クロスメディアはインターネットやモバイルを中心に据えて各メディアの相乗効果を狙った、より戦略的な展開」と記載されている。
印刷業界にとっては、デジタルとアナログを戦略的に組み合わせるこというイメージが今でも強いかもしれない。しかし、クロスメディアという概念は日々変化している。アナログとデジタルという対比は依然存在しているものの、「デジタル」という言葉では一括りにできないほど家電やデバイスやサービスの進化がもたらす影響が大きい。
スマートTV、パソコン、タブレット、スマートフォンによる「4スクリーン」には、動画、音声、文字によって構成される放送、通信、出版といった様々なコンテンツがすべて再現される。この「4スクリーン」を戦略的に組み立てていくことがマーケティングや広告の世界では浸透し始めている。
例えば出版コンテンツが関連する放送コンテンツ、音楽コンテンツの消費を刺激させることも可能だ。オンラインの情報から野外イベントへの動員や飲食店の来店につなげていくというO2O(Online to Offline)による導線の構築など、あらゆる業界に展開が可能となる。デジタルな刺激が書籍のようなアナログなメディアの購買を刺激させ、ベストセラーを誕生させることもできる。
このようにクロスメディアの概念は、日々進化し、変化し続けている。忘れてはならないのは、デジタルメディアを活用することに意味があるのではなく、あくまでもターゲットに合致したメディア設計でなければ有効とならないことである。アナログメディアがもっともターゲットに刺さるケースも考えられる。
最終ターゲットを冷静に見極めるのがクロスメディアビジネスの設計をする際に最も重要なポイントとなる。
次回 5月21日 に続く。
一般社団法人 電子出版制作・流通協議会
池田 敬二
1994年東京都立大学人文学部卒業後、大日本印刷に入社。入社以来、出版印刷の営業、企画部門を歴任。2010年より一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 事務局に勤務。趣味は弾き語り(Gibson J-45)と空手。JAGAT認証クロスメディアエキスパート。日本電子出版協会クロスメディア研究委員会委員長。JPM認証プロモーショナルマーケター。
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