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近年、印刷業を取り巻く環境は大きく変化し、今後の企業経営で重要になってくるのが“人”であり、有能な人材を育成する仕組みを構築できているか否かが、企業の長期的な成長力を左右すると言っても過言ではない。しかし厳しい経営環境の中で余力のある企業は少なく、効率的かつ効果的な人材育成施策を打ち出すことが多くの企業の課題ではないだろうか。また、今日では経営環境が多様化、複雑化しているため、場当たり的な育成施策では効果が出にくく、自社の状況に応じた育成施策の策定は必要不可欠である。
■効果を高める人材育成の PDSサイクル
全ての仕事の基本とも言えるPDS(Plan/Do/See)だが、人材育成に関しても非常に重要である。効果的なPDSサイクルを展開するには、自社の問題点および課題の把握を行った上で、適切な育成計画ならびに施策を講じ、その評価をする必要がある。具体的には以下のPDSサイクルの見える化を行い、組織全体で共有していくことが重要だと考えられる。
【図:人材育成のPDSサイクル】 ※画像をクリックすると大きくなります。
まず、大きな軸になるのは各社の経営戦略である。企業が進むべき方向性、あるべき姿を写す経営戦略と人材育成施策のベクトルを一致させるのは必要不可欠である。この部分が一致しないと、教育効果はあまり期待できないどころか、社員も方向性に迷いが生じて組織力がマイナスへ転じる可能性もある。経営戦略を踏まえて、経営陣、人材育成担当者、各部門の育成担当者が一緒になって協議し、自社が理想とする人材像を考え設定し、人材育成施策を講じる必要がある。
その上で、現状の社員の能力、スキルの把握を実施し、理想の人材像との差異(ギャップ)を分析すれば、自社に必要な年間教育計画や個々の研修内容等がわかる。能力の把握方法はいくつかあると思うが、人事評価制度、目標管理制度(MBO)がある場合は、それに即して社員を評価しているはずなので、その評価が現状の社員の能力であると判断しても構わない。(勿論、評価する側の能力、評価バイアスがかかって、正確な評価ができていない場合はあるが)また、こうした制度が無い場合は、理想の人材像が保有しているであろう能力項目をいくつか設定し、各部門長からの評価、社員自身の自己評価から簡易的に抽出する方法もある。
上記は一例であるが、「理想の人材像を見える化」「社員の能力を見える化」を図り、自社にあった教育計画を策定することが、効果的な人材育成施策を展開する第一歩である。勿論、策定した教育計画は社員へ公開(見える化)しトップダウンで説明することで、組織としての共有化を図り理解を促すことで効果が上がることは言うまでもない。
今回は「人材育成の見える化」と題し、「効果を高める人材育成の PDSサイクル」のPlan(教育計画の策定)について説明した。次回は、Do(研修実施)の見える化について説明していきたいと思う。
余談であるが、社員教育の助成金として多く使われている、「キャリア形成促進助成金」が平成25年度から大きく制度が変わるようである。まだ、詳細については発表されていないが、以前の制度より助成率等が高くなる可能性がある。中小企業の多くは限られた経営資源の中で社員教育を実施していくので、こうした助成金も上手く活用していきたい。
ちなみに助成金を申請する際も、提出書類の一つとして年間教育計画が必要になる。
(JAGAT 教育コンサルティング部 塚本直樹)