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縦組の本では、注の形式としては後注とする例が多い。後注は、注そのものの分量があっても利用でき、また、配置する箇所にばらつきがあっても、配置処理ではそれほど大きな問題とならない。
後注の配置位置は、対応する項目の段落の直後、節または項の最後、章の最後、本文の最後など、いくつかの方式がある。
注の位置は、できるだけ該当する項目の近くが望ましい。その意味では段落間に配置する方法が望ましい。しかし、段落の間に配置する場合、その組版処理は、やや面倒である。
図1に段落間に配置する後注の例を示す。
この例について、その処理を少し解説しておく。なお、注の文字サイズは、本文よりやや小さくする。ここでは本文9ポイントに対し、注は7ポイントとする。
日本語組版では、ベタ組が原則である。この場合、本文をベタ組にするだけでなく、後注の部分もベタ組にする。また、注の行頭を本文よりいくらか字下げした方が本文と注とが区別がついてよい。
図1では、次のような計算の結果、注の字詰め方向の配置法を決めている。
(1)本文の字詰め方向のポイント数を計算する
9ポイント×43字=387ポイント
(2)後注の文字サイズ(7ポイント)で割算する
387ポイント÷7ポイント=55倍…余り2ポイント
この結果、注をベタ組で配置するには、注の1行は54字または53字となる。原則として、文字サイズを小さくした注は、版面の下端をそろえ、余りの2ポイントは行頭側に、つまり字下げのアキの量で調節する。注を54字とする場合の字下げは7ポイント+2ポイントから、9ポイント、注を53字とする場合の字下げは7ポイント×2倍+2ポイントから、16ポイントとなる。
見出しなどの字下げでは、字詰め方向の並び(縦組でいえば横並び)も考慮し、本文文字サイズの整数倍の字下げにする。後注の場合は、それよりも注そのものをベタ組にすることを優先し、必ずしも本文文字サイズの整数倍にならない場合も出てくる。
注の行頭には注番号が付いている。例では、アラビア数字の前後をパーレンで囲んでいる。アラビア数字は、縦中横にする。パーレンの後ろは全角アキにしている。
例のような番号が付いたものを羅列する場合は、通常の段落のように1行目を下げないで、逆に1行目の行頭を上げると、番号が上に出て、探しやすくなる。2行目以下を1行目より1字下げとしてもよいが、例のように7ポイントの2字下ガリ(14ポイント下ガリ)にすると、番号だけが上に出て、区別がついてよい。
後注の行間は、本文とのバランスを考慮し、文字サイズを小さくした分だけ狭くする。例では、本文の文字サイズは9ポイントで行間は8ポイントであるが、注は文字サイズ7ポイントに対し、行間は4ポイントにしてある。
なかには、注や引用文の文字サイズを本文より小さくした場合、本文より行間を拡げ、本文と同じ行送りにする例もある。この方法は、注も本文と同じ行位置に配置でき、行送り方向の半端が出ないが、バランスはよくない。
段落の間に挿入される後注では、本文と後注との間の行間は、一般に本文の行間と同じにする。図1の例でも、後注の前と本文との間の行間は8ポイントである。
ところで、後注が段落の間に挿入される場合でも、版面の行送り方向のサイズ(図1では左右のサイズ)は、表示体裁を整えるために、他のページと同じにするのが原則である。
異なる文字サイズと行間であるので、注の最終行は、基本版面で設定した行位置にそろわない場合が多い。つまり半端(ハンパ)が発生するので、これを注の最後の行と、次に配置される本文の行との間にとり、版面サイズをそろえるようにする。左から2行目の“なお、ルビ……”の行の配置位置を、基本版面で設定した行位置にそろえる、ということでもある。
ただし、図2に示したように後注がページ末に配置された場合は、後注の最初の行と、その前の本文の行との間で半端を調整する。
版面をそろえる処理方法としては、次のような方法がある。
(1)配置するある行を基本版面で設定した行位置に配置する
(2)行の調整処理と同様に、半端が出た場合、一定の方針で行間を調整し、行送り方向の版面サイズを指定したサイズにそろえる。
図1の場合は(1)の方法でも処理可能であるが、図2の例は処理できない。(1)の方法は、組版ソフトでは可能なものがあるが、(2)の方法で自動処理する場合は、課題も多い。
なお、(2)の方法では、一般に詰める調整ではなく、空ける調整方法だけである。