印刷会社の経営と戦略、そして設備と投資スタンス2013 「JAGAT印刷産業経営動向調査2013」結果サマリ

2013年2～3月に調査した印刷会社経営動向調査の最新レポートがまとまった。印刷会社の経営状況、戦略、保有設備と投資意向はどのようなものか。業績良好な印刷会社のかたちとは。印刷会社の経営と戦略、設備と投資スタンスを同時に調査する唯一の本レポートから最新動向を見る。

経営　：　売上高は5年連続減少、営業利益率は4年ぶりに2％台を回復

売上高は5年連続のマイナスだが、下げ幅は過去3年の最小となった。売上営業利益率は4年ぶりに2％台を回復した。リーマン･ショック以降、初めて印刷会社の業績に下げ止まりの兆しが見られる。加工高比率と生産性の改善は足踏みの一方、固定費に踏み込んだ構造的な経費削減が貢献した。設備面では１人当り機械装置額の減少、人員面では非正規社員の活用拡大といった近年の傾向が続く。1人当り人件費は過去10年の最低水準に抑制された結果、労働分配率は2年連続で低下して人件費負担が軽減された。

戦略　：　デジタル対応の進展、経営スタンスの多様化

「強化したい工程」の最多は「デザイン」、「Web制作」と「電子出版」の順で続く。ただし、「Web制作」と「電子出版」を強化したいとする印刷会社は減ってきた。この数年で対応が進んだことなどが要因のようだ。設問を刷新して印刷経営のスタンスを具体的に聞いたところ、最も妥当と考えるスタンスの最多は「印刷ワンストップサービス」に「印刷専業」が続くことがわかった。「BPO」や「ソリューションプロバイダー」も多く、印刷会社は各社各様の方向に別れて歩み始めていることがわかる。

投資　：　設備投資は様子見続く、投資最重点分野は人材

設備投資額は昨年同様「前期とほぼ同じ」とした印刷会社が半数弱。そして「前期より増やす」と「前期より減らす」が約1/4ずつという構成だ。全体としては設備投資に中立的な、様子見的なスタンスが続いている。従って、取得から10年以上経過したオフセット印刷機の割合が上昇、老朽化が問題として顕在化しつつある。反面、デジタル印刷機は「ハイエンド」機の満足度がかつてなく高く、実用段階化を感じさせる。向こう3年の投資最重点分野は最多の「人材」に「印刷工程」が続いている。

プロファイル　：　業績良好な印刷会社のかたち

報告書では、業績良好な印刷会社の形を浮き上がらせている。業績上位15％の印刷会社と平均的印刷会社を比べると、売上高は平均的会社より約2割少ないが、1人当り売上高は平均より5％高く、加工高比率は約10ポイント高く、ここで収益性の大きな開きが生まれている。売上高は従来の分類に入らない「その他」の構成比が高い。従業員の平均年齢は約1歳若いが1人当り人件費は1割弱高く、1人当り教育研修費は平均の1.2倍。こうした人的資源への投資が活発などの特徴が見られる。

結果報告及びレポート

詳細な設問から構成される本調査に回答をいただいた130を越える印刷会社の方々に、心より御礼申し上げる。35回目となる本調査の調査結果及びその分析はレポート「JAGAT印刷産業経営動向調査2013 」にまとめ、7月7日に回答企業に献本を送付した。ダイジェストは、2013年6月15日、7月15日発行のJAGAT会員限定誌「月刊JAGAT info」6・7月号に掲載する。また、希望者には7月15日より有料で頒布するほか、報告会を8月に東京（29日）と大阪（30日）で開催する。

（JAGAT　日本印刷技術協会 研究調査部　藤井建人）

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■関連セミナー　【東京･大阪開催】
最新調査結果にみる印刷経営の現在と戦略
2013年8月29日（東京）、30日（大阪）
 
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「JAGAT印刷産業経営動向調査2013 」
体裁：A4版、102ページ
定価10,500円（税込）、JAGAT会員特別価格5,250円（税込）
発行：公益社団法人日本印刷技術協会　研究調査部
購入：お申込みはこちら

【構成】
１．2012年度の印刷会社の経営動向
 （1）経営動向の概況　
 　　　・パラダイムシフトへの対応を急ぐ印刷会社経営
 　　　・業績良好な印刷会社の経営構造
 （2）経営動向指標
 　　　・貸借対照表、損益計算書
 　　　・生産性、収益性、安全性
 　　　・人的資源（平均年齢・部門別人員構成比・教育研修費）
 　　　・1人当り指標（売上高・加工高・人件費・機械装置額等）

２．印刷会社の業績と経営戦略
 （1）業績と経営戦略の概況
 　　　・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
 　　　・業績良好な印刷会社の戦略　
 （2）経営戦略
 　　　・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
 　　　・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
 　　　・人材教育（手法・対象者・分野）

３．印刷会社の設備動向
 （1）設備動向の概況
 　　　・設備投資のスタンスと意向
 　　　・工程の保有・強化・縮小意向
 （2）設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
 　　　・枚葉機
 　　　・輪転機
 　　　・デジタル機等
 （3）新技術・新商品／サービスの導入意向
 　　　・クロスメディア展開
 　　　・導入状況と満足度
 （4）DTP環境
 　　　・PCの種類と台数
 　　　・アプリケーションの種類とバージョン
 　　　・データの入稿形態

４．印刷会社の経営指標
 （1）セグメント別の経営指標
 　　　・データ：損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
 　　　・セグメント：地域別、従業員規模別、業種業態別、オフ輪の有無別）
 （2）月次の各種前年比推移

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【印刷産業経営力調査の概要】
概要：印刷会社130社から調査票を集計
内容：印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間：2013年2月～3月

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