本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
段落間に後注を挿入する場合、行送り方向の版面サイズの調整が必要になる。これ以外に、横組を例にすると、字詰め方向の左右には文字を配置しない図版を段落間に挿入する、あるいは、別行にした分数などの数式を段落間に挿入する場合にも、行送り方向の版面サイズの調整が必要になる。
このように、基本版面の設定で決定した文字の配置方法とは異なるものを配置するとき、行送り方向の版面サイズの調整が必要になる場合がある。
行送り方向の版面サイズを調整する方法としては、次のような方法がある。
(1)行ドリで配置する
(2)指定した行を基本版面の設定で決定した行位置に配置する
(3)配置した要素の前後の行間を変化させ、版面サイズを調整する
行ドリで配置する方法では、基本版面の設定で決定した行位置を基準に、整数の行数で見出しなどの配置領域を設定する。調整というよりは、行送り方向の版面サイズに半端がでないようにする方法である。見出しなどの配置に利用されている。
ある要素の前または後ろの行間を調整する方法は後注などで、前後の両方の行間を調整する方法は数式や図版・表の配置などで利用されている。
なお、見出しを行ドリで配置する場合、ページ末にきた見出しをどう処理したらよいかという問題もある。一般に横組では奇数ページも偶数ページも、ページ末にきた見出しは、次ページに追い出す処理を行う。これに対し、縦組では、奇数ページの末尾にきた見出しは、追い出して、次の偶数ページの先頭に配置し、偶数ページでは、すぐとなりに奇数ページがつづくので、そのままページ末尾に配置する方法とする例が多い。また、ページ末に指定した行数がない場合も次ページに見出しは追い出し、ページ末は空けたままにしておく。
ここでは、数式を別行にして配置する場合について例を示す。
図1には、別行の数式を行ドリで指定し配置した例を示す。
図2は、数式の前後の行間を変化させて版面サイズをそろえた配置例を示す。
図2の方法は、数式の前後の行間の最小値を本文の行間とし、行送り方向の版面サイズに半端(不足)が発生した場合は、数式の前後の行間に均等に配分して版面サイズの半端を調整している。
図1の方法は、数式以外の本文は、他のページの行位置とそろうが、数式の前後の行間にばらつきがでる。
図2の方法は、数式の前後の行間は一定になるが、本文の行について、基本版面の設定で決定した行位置に配置されない場合もでてくる。
数式を組む場合、一般には図2の方法で配置するが、段組で数式も多くでてこない場合には、図1の方法とする例もある。
図2のような処理を手動で行う場合、活字組版では比較的に簡単であったが、コンピュータ組版ではかなり厄介である。正確に行うためには、かなり面倒な計算を行う必要がある。したがって、行の調整処理を自動処理させるように、版面サイズの調整方針を指示しておくことにより、版面サイズの自動処理ができることが望ましい。
それができない場合、版面サイズの半端を吸収する(追加する)コマンドを挿入する方法も考えられる(このようなコマンドを準備しているコンピュータ組版システムもある)。版面サイズに半端(不足)が発生した場合、このコマンドが挿入されている行位置に、その半端分を均等に追加する。
なお、行間を変化させ、行送り方向の版面サイズの調整する方法では、一般に、詰める調整は行わないで、空けて調整する方法が一般的である。
行の調整処理の自動処理は、初期のDTPなどでは問題も多かったが、今日ではその処理もずいぶん改善されている。これと同様に、行送り方向の版面サイズの調整処理の自動化についても改善されることを望んでいる。