本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
クラウド型校正サービスの現状と効果的な利用法について、ダイヤミックの小島誠生氏に話を伺った。
通常、印刷物の校正は校正紙を何枚も用意して、関係部署に配布することから始まる。部署ごとに赤字を入れてもらい、それを回収、集約して、修正を行う。時には指示が不明確で修正できないため、指示内容を再確認することもある。しかし、誰がその指示を記入したのか、校正紙を見ただけでは分からないことも多い。赤字の内容を確認するだけで、たいへんな時間や手間が掛かる。
何人もの関係者がチェックしているが、チェックしている本人はほかの関係者のコメントを見ることがないため、修正指示の重複や見落としもある。複数の印刷物(ジョブ)が、並行して動いているときには、さらに進行が複雑になる。
色校正を別にしても、短時間での校正のやり取りはミスが多く、このように時間も費用も手間も掛かっているのが実態である。
ディアリブレポータル は、三菱製紙が提供するクラウド型校正サービスである。オンライン入稿やオンライン校正、自動プリフライト、デジタル検版、校正進捗管理の機能がある。
クラウドサービスであるため、特別なハードウェアやソフトウェアをインストールすることもない。契約時にアカウントとパスワードが発行されるだけである。利用者の数も無制限であり、ファイルのアップロード実績に応じた課金方式となっている。
オンライン校正を行うには、印刷会社側で校正用のPDFを制作後、クラウドにアップロードする。クライアントやデザイナーなどの関係者に校正依頼のメールを送信する。クライアントの各部門の担当者やマネージャーは、Webブラウザから校正用PDFを開き、関係する個所をチェックし、修正指示コメントを書き込むだけである。
同時に複数の関係者がアクセスでき、コメントの履歴が残される。インターネット環境があれば、どこからでもアクセスできるため、担当者が出張中でも、遠隔地の事業所にいても校正が行える。
仮に複数の担当者が内容の違う修正指示をした場合でも、いつ誰が指示したのか、責任の所在が明白なため、すぐに確認することができる。
自動プリフライトチェックは、作成されたPDFのプリフライトを事前に行う機能である。例えば画像の解像度やカラースペースが適正かどうかなど、印刷データとしての問題点をあらかじめチェックすることができる。
デジタル検版とは、校正用データと修正後のデータを比較し、差分だけを表示する機能である。修正指示した内容が適正に反映されているかどうか、容易に確認することができる。修正漏れや指示外の変更がないか、スピーディにチェックすることができる。
印刷会社がクラウド型校正サービスを導入し、クライアントとの校正のやり取りをオンライン化することで、営業担当者が移動する時間や費用、校正紙の出力代・送付費用などのコストを削減することができる。また、関係者が同時にアクセスできるため、校正期間を短縮し、修正漏れを防止することにもなる。
アサヒペンは家庭用の塗料を製造・販売するメーカーである。
本社の営業企画部は広告宣伝や販売促進、Web制作のほかに商品パッケージやカタログのデザイン制作を担当している。従来は、パッケージやカタログのデザイン案をインクジェットプリンターで出力し、関係する事業部と技術部など関連部署の10数人に回覧して、内容をチェックしていた。
1年間に発表する新製品の数は20~30種類もあり、並行して進行されている。1~2週間で予定していた校正作業が、実際には1カ月以上も掛かってしまうこともある。
クラウド型校正サービスの導入によって、インターネット上で入稿・校正・承認ができ、デジタル検版機能を使用して、修正前と修正のチェックも簡単に行える。校正紙のやり取りがなくなり、校正の時間を大幅に短縮することができた。赤字内容の共有や確認も、簡単に行えるようになった。
ただし、現時点ではシステム管理とセキュリティ上の問題から、印刷会社とのやり取りには使用せず、社内だけの利用に留められている。
現在では、個人でも、企業内でもあらゆる分野でクラウドサービスが利用されるようになった。クラウドサービスによって、時間と場所とファイル容量の壁をなくすことが可能になる。
Web環境を最大限に活用して顧客の負担を減らすことも、印刷サービスの差別化要素となるだろう。