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Web to Printを印刷会社にとって都合が良いシステムとだけ、考えてはならない。印刷発注する企業にとって、強力なマーケティングツールに変身することもある。
■Web to Printとは?
Web to Printとは、Webブラウザーからデータ入稿や印刷指示・発注を行い、印刷物を制作・納入するシステムや仕組み、またはビジネスモデルの総称である。
端的に言うと、Web経由でデータ入稿と印刷発注を行うシステムを指す場合と、印刷発注者自身がWeb上でレイアウトを行い、印刷物を発注する仕組みを指す場合がある。
■印刷通販ビジネスの基盤
前者で代表的な例は、近年、急成長している印刷通販ビジネスである。Webからの完全データ入稿を前提としているため、印刷会社から見ると営業レスの印刷受注ビジネスとなる。
完全データとは、通常はDTP制作されたPDFを意味している。DTP環境を用意できない、または操作できない顧客のために、近年ではWeb上の簡単レイアウト機能や、オフィスソフト変換機能も提供されている。
■Web上で本格的な組版レイアウトを実現
後者には、不特定多数がアクセスして印刷物をオーダーする印刷サイトと、本格的なDTP制作をWeb上で実現する方法を指す場合がある。
不特定多数がアクセスして印刷物をオーダーするサービスとしては、名刺・ハガキ・年賀状などの定型物やウエディング関連の印刷がある。
最近では、ブログやフォトブックを自分でレイアウトして、印刷・製本をオーダーするブログ製本やフォトブックサービスも増えている。レイアウトは、デザインテンプレートを選択して、写真をアップロードし、文字を入力するだけであり、最終イメージを画面上で確認できる方式である。
本格的なDTP制作をWeb上で実現する方法を指す場合として、代表的なものに情報誌やフリーペーパーの制作システムがある。
中古車や求人・グルメ情報などを掲載する情報誌型フリーペーパーは、ほとんどの記事が定型的な広告から成り立っている。営業担当者が広告受注と同時にデータ入力するだけで、DTPデータが生成され、定型記事が完成する。営業担当者には、DTPのスキルやソフトウェアは不要である。
最初にシステムを構築すると、それ以降のDTP制作を極限まで効率化することができる。また、Webページ制作と連動するケースもある。
印刷物をオーダーする印刷サイト、Web上で本格的なDTP制作を実現する方法のどちらにも言えることは、専門的なDTPスキルやソフトウェア無しに、つまり、専門家の手を借りずにDTP制作が可能なことである。さらに言えば、その分のコストもかからない。
■マーケティング上の強力なツールとなるWeb to Print
大手メーカーや大手流通業では、全国各地の販売店や事業所が定期的に必要となるチラシやカタログをWebから発注する仕組みを構築し、多品種小ロットの印刷物を製作するケースが増えている。
全国各地の販売店や事業所で製作するチラシやカタログは、店名や住所はもちろん、キャンペーン内容や製品構成もさまざまである。各販売店では、デザインテンプレートによって一定のルールに則したレイアウトを簡単に指定することができ、必要な部数を指定の場所に送付してもらう。承認や決裁フローも、自動的に関係部署に通知されるようになっている。
本社や本部から見ると、各販売店や事業所のキャンペーン実施内容を把握することができるため、販売実績と照合することで正確な効果測定が可能となる。結果的に、より効果的なキャンペーンが可能となる。
印刷会社から見ると、1件当たり100部から500部程度の印刷物のオーダーが、継続的に来ることになる。1ヶ月単位でカウントすると、相当な分量となる。 しかも、受発注に関する日常的なやり取りはすべてシステム化されているので、特別な確認作業も発生しない。
■外国車メーカーのWeb to Print
ある外国車メーカーでは、各ディーラーが有望な顧客へのDMやパンフレットを発注するためのWeb to Printの仕組みを構築している。
各ディーラーでは、Webサイトにログインして、新車キャンペーンなどの時期に合せて印刷物を発注する。レイアウトは、テンプレートにしたがってパーツを配置し、キャンペーン関連のテキスト情報などを修正するだけなので、特別なスキルや知識は不要である。テンプレートや素材データは、本部から支給されているため、デザイン上の品質は保持される。
デザインや発注部数など決裁者の承認を経て、各ディーラーから印刷会社に発注情報が発信される。伝票処理は各ディーラーと本部とのやり取り、あるいは本部と印刷会社のやり取りであり、人手がかかるものではない。
このような仕組みを導入した結果、この本部は各ディーラーのキャンペーン実施状況を正確に把握することができる。販売実績と照合することで効果測定も可能となる。そのため、次回のキャンペーン内容の改善を図り、ディーラーへのフィードバックも可能となる。
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このように、Web to Printとは、必要に応じてレイアウトデザインされた印刷物を効率的に制作する仕組みであるとともに、クライアントのマーケティングを支援するための仕組みとも言える。
言い換えると、このようなクライアントにとって、Web to Printの仕組みで製作されたチラシやDM、カタログは重要な価値を持った印刷物だと言うことである。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
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