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印刷業における地域活性ビジネスへの取り組み状況や実態について、JAGAT『印刷会社と地域活性』レポートの中から内容を一部紹介する。
JAGAでは、印刷業界における地域活性ビジネスへの取り組み状況を知るため、会員企業にアンケート調査を実施、調査結果のほか地域活性に取り組む経営者の座談会、実際の取り組み事例を盛り込んだ地域活性ビジネスの入門ガイド『印刷会社と地域活性』を発行した。今回はアンケート結果から見えてきた印刷会社における地域活性ビジネスの実際を紹介する。
調査結果を見ると、回答企業の70.8%、7割以上がすでに何らかの地域活性ビジネスに取り組んでいることが判明した。さらに、現時点で取り組んでいない会社の4.3%が今後取り組む必要性を感じているなど、地域活性ビジネスへの関心の高さがうかがえる結果となっている。
取り組み始めた時期について、「1~3年前」(21.4%)、「4~6年前」(20.2%)、「7~15年前」(25.0%)、「それ以上前から」(25.0%)と、開始時期が均等に分布しているのは興味深い。「創業時から」取り組んでいるのは6.0%だけだった。
しかし地域別に見ると、地方では「7~15年前」「それ以上前から」という回答が多く、一方、首都圏は「1~3年前」が、大阪圏は「4~6年前」が最多回答と、地方と比較して都市部の取り組み開始時期は遅い。印刷は都市型産業であり、仕事は産業集積地に集まりやすい。そのため、景気低迷の長引いた地方から地域活性ビジネスの取り組みが始まり、徐々に都市部へと進んでいったようだ。また、地方には地域の印刷を一手に引き受け、地域の発展とともに歩んできた印刷会社も沢山あり、早い段階で地域貢献を意識していた場合も多いと考えられる。
では、実際に地域活性の仕事は増えているのか。前年と比較した地域活性ビジネスの総売上高に占める割合を聞いた設問では、「かなり増えた」会社が13.1%、「少し増えた」会社が42.9%となり、「増えた」と実感している会社が全体の56.0%になった。「減った」会社が1割にも満たないことから、印刷会社における地域活性化に関する仕事は確実に増えていると見てよい。今後はどのようにして地域活性ビジネスの収益性を高めていくのか。新しいアイデアや手法などが求められてる。
現在の取り組みとして最も多かったのは、「工場、会社見学の受け入れ」の55.3%と過半数の会社が取り組んでいる。「地域学生への体験講座実施」も4割弱の会社で行われているなど、地域社会と密接な関係を持とうと努力している印刷会社の多いことが分かる。
一方で、「商店街活性化」や「自社オリジナル商品・キャラクター開発」を挙げる印刷会社が全体の34.1%にのぼるなど、地域活性ビジネスに取り組む印刷会社の3社に1社が新しい印刷需要の創造を試みている。
ほかのあらゆるビジネスと同様、短期的な収益性を求めることは難しい地域活性ビジネスだが、地域のための活動を続けることで地域との相互理解が深まりながらネットワークが構築され、自社の人材が育ち、派生的に新しい印刷需要が育っていくというメリットがある。自分達の地域で長期的に持続性あるビジネスを展開していくことを考えるのであれば、地域活性ビジネスは非常に有効な策の1つとなる。
(JAGAT 研究調査部 小林織恵)
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