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組版のよしあしは、主に印刷所の組版作業内容であったが、活字組版ではよく問題になった。印刷所により、得意とする分野が異なり、また、その品質にも差があったことによる。それにより校正作業に影響する場合もあった。
コンピュータ組版でも、同様に組版の質を評価する必要がある。ただし、コンピュータ組版では、仕事の分担もさまざまで、その責任が誰であるのかがあいまいとなるので、問題点を整理することが大切である。
ある組版を評価する場合、何が問題かを明らかにする必要があり、その原因なり結果は、次のどのレベルによるものなのか、それをまず検討する必要がある。
(1)組版ソフトの機能なり、その処理能力によるものか
(2)組版ソフトを実際に指示・操作するオペレーターによるものか
(3)組版の設計及びその指示(又は指示されていない)によるものか
(4)原稿の問題によるものか、原稿の準備は誰が行い、どの程度の原稿編集(原稿整理)がどこまで行われていたか
なお、コンピュータ組版では、仕事の分担もさまざまで、原稿編集(原稿整理)―デザインと指示―組版―校正といったように細かく分業する場合もあれば、1人の編集者が原稿編集(原稿整理)・デザインと指示・組版(さらに校正)の作業を全部担当してしまう例もある。
さらに、組版の仕事を継続的に行っており、発注側と受注側がある程度の共通認識をもっているのか。
そうではなく、1点ものにちかいすべてを確認しないといけないケースか、も考慮する必要がある。
組版を評価する立場の違いによっても評価内容は異なってくる。
(1)読者の立場(読みやすいか、理解しやすいか)
(2)編集者やデザイナーの立場(読者の立場を含みながら、作業の合理性や費用、内容が正確に表現されているかも問題となる)
(3)著者の立場(表現したい形式になっているのかが主な問題であるが、好みということもあろう)
(4)実際に組版の仕事を行う立場(どこまでの作業内容が含まれるかによる)
出版物(印刷物)の内容、つまり出版物(印刷物)作成の目的によっても組版の評価は異なってくる。
読者はだれか、予算はどの程度か、どの部分に注目してもらう必要があるのか、それは通読するものか、あるいは辞書のようにある箇所を見つけやすく、そのほんの一部だけを読めばいいものか。
小さい文字の辞書を通読するのは苦労するが、短い分量であれば、小さい文字であっても人は結構読んでしまう。
たとえば、書籍の本文は、一般に通読をするものである。そのために書籍本文は一般にスミ文字にしている。色文字にした例も、少ないがある。
私にとっては、とても読みにくく、読むのをやめることが多い。どうしても読んでおく必要があれば、かなり無理をして読む。
つまり、よほどひどい組版でも、必要があれば、文字が並んでいれば、人は無理をしてでも、あるいは苦労をしてでも読んでしまう。なお、部分を強調するために一部を色文字にする例もある。これは、読む分量が少ないのであるなら、それほど読者の負担にはならない。
したがって、組版の評価は、その評価レベルを読めることが可能かどうかとするか、それともできるだけ読みやすい組版を考えるかでも異なってくる。
書籍などでは、本文の読みやすさがまず問題となる。しかし、これも評価となると、そう簡単ではない。
人には個人差もある。
私は強度の近視なので、文字がやや小さくても、眼鏡を外し、印刷物を目に近付けると読めてしまう。したがって、私は文字サイズはいくらか小さくてもよいので、行間をある程度とってもらった方が好ましい。文庫本で文字サイズを大きして、行間を狭くした例があるが、私にとってあまり読みやすいものではない。
しかし、遠視の人は、そうはいかない。文字サイズを大きくすることが優先されよう。
図1と図2に、文庫本の組版例を掲げる。
図1の文字サイズは8ポイント、行間は6ポイントである。1ページの総収容字数は672字である。
図2は、文字サイズを9ポイントと大きくし、図1よりやや大きい版面サイズと図1よりやや少ない収容字数(646字)にした例である。行間は4.5ポイントとした。
さて、どちらの方が読みやすいのであろうか。