本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
このたび『印刷白書2013』が完成、発刊の運びとなりました。刊行のご挨拶を申し上げます。
現在の経済情勢を見ると、2012 年半ばから秋頃までは世界的に停滞感の強い展開となったものの、その後は徐々に明るさが戻ってきました。
日本経済は、輸出や生産の減少などにより弱い動きが続いていましたが、昨年末の新政権発足後、「アベノミクス」といわれる金融・財政政策が打ち出されて円安と株高が進行し、一部の企業や個人では景況感も改善しつつあります。
一方、構造的問題として、コミュニケーションにおけるデジタルメディアの浸透とそれに伴う紙メディアの需要減少が進む現在の経営環境下では、印刷産業の将来と一口にいっても、セグメントごとにそれぞれ違った未来があり、各企業がどのような分野に関わっているかによって、置かれている状況も様々です。
業界全体としては、印刷物の価値を高めたり付帯サービスを提供する努力はもとより、単に印刷物を作成しサービスを提供するプリントサービスプロバイダー(PSP)から顧客の商品やサービスの売り上げを伸ばすような提案を行うマーケティングサービスプロバイダー(MSP)へ、あるいは従来とは異なる現代的な何らかのソリューションを提供するソリューションプロバイダー(SP)へ、さらには顧客の業務プロセスの一部を受託するビジネスプロセスのアウトソーシング(BPO)へと向かうべきだ、また業態変革にもチャレンジすべきだといわれてきました。
しかしながら、「JAGAT大会2013 」でお話ししたように、仮に自らのビジネスを再定義して新たなビジョンを掲げたとしても、昨日まで真面目なPSP だった会社が急に明日からMSP に変わるということはありません。現状で起こる問題や当面の課題に直面した際、ステップバイステップでこれらを解決していき、その他にも新技術の導入や他社とのアライアンス、より多くの研修の場を設けるなど、良いと思われることに積極的に取り組んでいく必要があると思います。
印刷関連の企業で未知のマーケットに参入する場合、会社の中では得られない外部の情報が必要になります。この白書のレポートや分析が参考となり、そこから何らかのインスピレーションが得られれば、新しいことを始めるきっかけになるかもしれません。多くの場合、新しい技術のイノベーションの裏付けがなければ、新しい時代のニーズに応えるソリューションを提供できません。
『印刷白書2013』では、印刷メディア・同関連産業の現状と動向、経営課題になどを中心に、企業経営の参考になるよう例年以上に留意しました。皆様にとって興味のある分野から目を通していただければと思います。本書が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
2013年9月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎
『印刷白書2013』
2013年9月30日発刊