本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
特集「デジタルイノベーションと新領域ビジネス」ではデジタル化の総括と今後の新たな挑戦、事業展開、印刷会社がもつべき知識やスキルについても考察している。
■特集は「デジタルイノベーション」がテーマ
今年もJAGATでは、『印刷白書』を刊行した。2006年版から書籍の体裁にリニューアルして、会員企業の代表者に1冊献本している。2009年までは、毎年6月のJAGAT大会の開催に合わせて発行していたが、2010年からは8月末の統計資料まで反映しているため9月発行になっている。
今回の特集ではJAGAT大会2013のディスカッションで取り上げたテーマをさらに深掘りした。印刷会社がDTPというデジタルの波を乗り切ったことは事実であり、アドバンテージもあるが、DTPによるビジネス革命を印刷業界主導で起こすことが困難だった。
いま起きているDTPを越えたデジタルの大きな波を乗り切るために何をするべきか、特集で考察している。
関連資料「DTP・デジタル年表」では、過去と現在、そしてこれからのデジタル化の流れを、主に技術進化の視点で捉えることができるようにした。
■表紙デザインについて
デザイナーの大森裕二氏には、2007年から印刷白書の表紙デザインをお願いしている。今年の表紙については、
「JAGAT の正式名称の欧文タイポグラフィーです。白書という性格がもつ明快さ、見やすさ、わかりやすさ、それらのイメージをタイポグラフィーと色で表現してみました。色は、主張しすぎずしかしながら存在感はあるという狙いで、DICのフランス伝統色から「青い霧」という意味をもつ色、DIC F33を選びました。」
とその意図を述べている。特色を使っているので、Webで見ると色の再現は難しい。「青い霧」としての実物を手に取っていただきたいと思う。
■2013年版ならではの新しい課題項目
統計データに関する質問が幾つか寄せられたことから、印刷産業の市場規模を推計できる統計資料を一覧表にまとめ、印刷産業以外の方にも印刷産業の全体像を理解してもらえるような構成にした。
「経済センサス-活動調査」 により、印刷産業だけでなく、全産業の経済活動の実態を同一時点で網羅的に把握することができる。印刷産業とその主要取引産業の実態を比較した図表なども掲載している。産業連関表による印刷需要の考察などJAGATならではの分析結果も満載。各種データを駆使して独自の切り口でまとめている。章末に関連資料があるが、印刷産業の関連資料は昨年より多く22ページにも及んでいる。
第3部「印刷産業の経営課題」では、最初にドメインを取り上げた。昨年初めて自社の事業領域の再定義について触れ、「顧客のコミュニケーション支援ビジネス」をテーマにした。今年は経営者の決断と社員の意識改革についてまとめた。またビジネスのコアとして、印刷会社の事業領域拡大の方向性の一つとしてのBPOに焦点を当てた。
印刷産業を取り巻く環境や産業構造が大きく変化している中で、どのようにビジネスを展開していくべきか。『印刷白書2013』では印刷通販、3Dプリンター、デジタルメディアビジネス、知的財産権、差別化戦略など新たな課題について取り上げている。一見すると自社には関係のなさそうなものでもその潮流は押さえておいたほうがいいと思う。
もちろん興味のある分野から読んでいただければいいのだが、全体構成として最終的に人材の問題に行き着くことを示している。企業の成長のためには、人材の成長は不可欠である。そのことをあらためて認識できるように配慮した。
広く産業に役立つ年鑑として、幅広い用途に活用していただけるように全体を構成し、企画編集している。そのためには組版にも気を使い、UDフォントで見やすさを追求し、グラフや図表の類にも可読性を重視したデザインを施している。ぜひ事業戦略の一助としてご活用いただきたい。
(JAGAT 研究調査部 上野寿)
『印刷白書2013 』
2013年9月30日発刊