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DTPソフトの学び方は、仕事の内容や目的により考えていくことで、ある決定的な方法はないだろう。各自の状況にもよる。
しかし、DTPソフトの全体像を1度はとらえておくと、何かと役立つ。どうすればとらえられるか、だいぶ前のことであるが、私の経験を書いてみよう。
当時(20年ほど前)は、DTPを学ぶにはマニュアルを読むものではない、使って学べばよい、という意見が多かった。マニュアルが読みにくかったのも理由かもしれないが、私は本を読むことは嫌いではなかったし、マシンを使える時間も限られていたので、ひたすらマニュアルを通読した。
QuarkXPressでいえば、Ver. 2では1回、Ver. 3では2回、Ver. 4では1回通読したように記憶している。InDesignでも異なるバージョンで3回ほど通読している。
当時は紙に印刷した分厚いマニュアルがソフトに附属していたので、可能なことであった。
(今日は、PDFやオンラインのマニュアルが多くなり、マニュアルを通読することも難しくなり、また、必要な際に検索して確認する方が早いかもしれない。)
マニュアルを読むに際して、まず注意したことは用語である。ソフトごとに独特の用語があり、しかも、一般の用語とはやや異なった意味をもつケースもあった。それは問題といえば問題であるが、文句をいっても解決しないので、このソフトでは、こう理解するのだと思うしかないだろう。
巻末に用語一覧を掲げたマニュアルもあり、ここで最初にしっかり用語の意味を確認しておいた。
次に大事なことは、いったい組版で何を実現するのか、それは簡単にできるのか、かなり面倒なことになるかを考えながら読むことである。
たとえば、見出し(別行見出し)の多くは、行取りで指定する。サブタイトルが付いた場合など、どうすれば設定できるのか、また、図版の配置や、その際の回り込みはどう設定したらよいのか。こうした問題意識を持ってマニュアルを読んだ。
私の場合、書籍の設計と指定の経験があったので、何が問題になるか理解していた。そうでない場合は、書籍や雑誌などでは、どんな要素があり、そこでは何が配置の際に問題になるかを学んでおくとよいだろう。
図1に書籍における図版配置の問題点をいくつか示しておく。
DTPでは、各種の書式(属性)を設定する命令(コマンド)がある。こうした命令の設定対象は何かも、常に意識してマニュアルを読むようにした。
その命令は、選択した文字列が対象か、それとも段落か、あるいは、一連のつながったテキストか、という問題である。なかには、ファイル全体の属性を設定する命令もある。
たとえば、行間は、あるソフトでは段落であるが、あるソフトでは文字列が対象である。段落を単位とする場合は、段落のある一部の行間を変更することはできないことになる。
また、各書式を設定する長さの単位にも注意が必要である。長さの単位として複数の単位を使用できるソフトが多い。表示はどうなるのかも確認しておくとよい。
また、数値の設定では加減乗除の指定が可能な場合が多い。これもマニュアルで最初に読んだ際に、柱とノンブルの位置を設定する、柱などと基本版面との相対位置を設定する際に、すぐ利用できると思った。
私の場合、DTPが本業ではないので、最初は少しとまどいもあったが、マニュアルをしっかり通読したおかげで、それほど時間をかけずにDTPソフトを使うことが可能になった。
各種の書籍の設定を行う場合、どの書式設定を行えばよいか、その際に何が問題になるか、全体像をつかんでいたことが、大きく役立ったように思う。もちろん、具体的ことで問題になる場合もあったが、どの機能を使えば便利か理解していたので、無駄なことをすることもあまりなかった。
一度、こうした全体像をつかんでおいたので、別のソフトを学ぶ際にも役にたつことも多かった。