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山陽印刷株式会社が運営する「アーティストネットワーク+コンパス」は、印刷会社の社屋をフルに活用した美術展を開催し、地域貢献、アーティストとの連携、そして社員の結束力向上を図っている。
「会社まるごとギャラリー2013 『Open The Door』展」と名付けられた本展示会は9月28日(土)から11月30日(土)まで開催されている。常設展示室はもちろん、会議室、工場、食堂、社長室まで社屋のあらゆる場所を展示会場とする手法がユニークで、地域住民や顧客などから好評を博している。
展示作品は、「アーティストネットワーク+コンパス」参加アーティストである天野浩子、上野彰子、衛守和佳子、田中清隆の4人による過去の作品に加え、印刷工程で出るインキ缶、不織布、切断紙等の廃材を活用した今回オリジナル作品で構成し、また出品作家によるワークショップの成果も併せて展示している。
エントランスを幻想的に彩る光のオブジェ(田中清隆作)
左上:社長室には、インキの空き缶を利用した作品を展示。缶のウラに残ったインキを生かし、色彩豊かに仕上げている(天野浩子作)
右上:和室に展示された陶芸作品。柔らかなタッチで植物を描き、生命の大切さを表現している(衛守和佳子作)
左上:階段の壁に覗き窓をイメージしたイラストレーション作品を展示。インキ缶に不織布を貼り、不思議な生き物を描いている(上野彰子作)
右上:ワークショップに参加した地域の子どもと保護者の手によるトーテムポール。インキの空き缶に色紙を貼り、喜怒哀楽を表現している
●アートメセナ活動の発展
山陽印刷は、1990年に横浜市金沢区福浦への移転を機に、若年アーティストの発掘、育成を目的とするアーティストネットワークを設置するなど、アートメセナ活動に取り組み、1996年には、神奈川県より地域共生企業の表彰を受けている。社屋自体も、要所要所にアート作品を配置したり、バーや茶室風の和室を設けるなど、個性豊かでぬくもりのある職場空間となっている。社員満足と顧客アピールを同時に実現する空間を作りたいという、秋山至前社長の思いが詰まった社屋だ。
アーティストネットワーク+コンパスは、その流れを発展させ、アートの力で地域社会とアーティスト、自社をつなぐことを目指し、スタートした。2012年12月よりアーティストを講師に招いた親子ワークショップを成功させ、また公益財団法人横浜市芸術文化振興財団による「ヨコハマアートサイト2013」の認定を受けたことが、本展示につながった。
●地域、アーティスト、社員それぞれの充足を図る
本展示は、地域住民および同社を訪れる顧客に、アートを気軽に楽しむ機会を提供している。アートは日常生活とかけ離れたものという意識が多くの人のなかにある。しかし、アートは本来誰にでも開かれたものだ。日常空間にさりげなく作品が置かれることで、アートへの敷居をぐっと下げることがきる。またワークショップに参加し、アーティストと一緒に作品を作ることで、アートへの理解をより深めることができる。
参加アーティストには、より広い層を対象とした発表の場を提供できる効果がある。美術館・ギャラリーと異なるオープンな空間での展示は、これまでアートに関心のなかった人々との接点となる。
社員がアートに触れることで創造力を高め、モチベーションアップにつながる効果も期待できる。アーティストとともに企画を練り、イベントに参加した地域住民に喜んでもらえるといった経験が、通常業務では得られないやりがいを社員にもたらす。
同社は、ほかにも地域と結んでさまざまな事業を展開している。例えば横浜商工会議所金沢支部の呼びかけに応え、地元の和菓子店とともにご当地和菓子「横濱・金澤べっぴん娘」を開発した。また、神奈川県立産業技術短期大学校と協力し、若者向けの名刺を企画・製作した。「アーティストネットワーク+コンパス」も、地域貢献活動の一環として今後も取り組んでいきたいという。
「地域貢献活動は、直接的な利益をもたらすものではないが、地域のために活動を続けていけば、やがて自社の発展につながっていく」と、同社の秋山桂子社長は語る。 同社はアート貢献に取り組む中で、アーティストによる個展の販促物などを自然に受注できるようになったという。和菓子の開発に取り組めば、製品パッケージのノウハウを高めることができる。こうしてより高品質でデザイン性の高い印刷物を世に送り出すことが、社員の能力向上とやりがい、そして自社のブランド力向上に結びついていく。
11月末でいったん区切りをつける「会社まるごとギャラリー」だが、来年もまた開催する予定という。アートを核とした同社の地域貢献活動のさらなる発展を期待したい。
○「会社まるごとギャラリー2013 『Open The Door』展」
2013年9月28日(土)〜11月30日(土)
一般公開日:11月30日
アポイント制で午前10時半、午後2時よりギャラリーツアーを実施
申し込みは「アーティストネットワーク+コンパス」へ
http://www.anc3434.com/
○山陽印刷株式会社
http://www.sanyoprint.co.jp/