本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
組版する際のルールはいろいろある。しかし、そのルールの適用を考えた場合、一様ではない。
例えば、行頭に句読点を配置することを禁止するルールを採用しない出版物はないであろう。新聞でも、このルールを採用している。ところが、感嘆符や疑問符となると、これらを行頭に配置する書籍はほとんどないが、新聞では行頭に配置している例がある。
行の調整処理のような問題では、どこで調整するか、どこを優先するかについて、狭い範囲でしか調整を認めない方法から、ある程度の広い範囲での調整を認める方法まである。
また、ルビの配置方法は書籍では様々の方法で組版されており、ルビの配置方法について唯一の正しいルールというものは存在しないようである。
例えば、ルビの字数が多く、親文字からはみ出したルビを漢字に掛けること禁止している出版物もあれば、ルビ文字サイズで二分まで掛かることを許容している出版物もある。なかにはルビ文字サイズで全角まで漢字に掛けている出版物もある(これは誤読の原因ともなるので避けるのが望ましい)。
熟語のルビでは、それぞれの漢字の読みを重視した方法をとっているものから、熟語というまとまりを重視したものまで様々である。図1 に例を示す。どれが望ましいかは、いろいろと意見が分かれているが、どれも誤った配置方法とはいえない。
別ないいかたをすれば、ルビの配置方法は、肩ツキにするか、中ツキにするかという方針だけでは、その配置位置は決まってこない、ということになる。
つまり、ルールについては、ほぼどんな場合でも適用するルール(いわばかたいルール)と、ある程度の範囲で許容が認められる(ゆるやかなルール)、あるいは複数の選択肢があるルールがある。
そこで、印刷物を作成する際には、組版のルールを発注元と発注先で確認しておく必要がある。しかし、ルールを決めるとなると、印刷物の目的、費用(予算)、原稿の内容や作成方法、さらには組版システムの機能も考慮して決めないといけない。
また、印刷所との継続的な取引を行っているのか、あるいは新規に発注するかで、ルールの確認方法は変わってくる。
継続的に取引を行っている場合、ルールの確認はすでに行われている。また、校正刷のやりとりのなかで経験もつんでいる。したがって、それぞれの印刷物を発注する都度、ルールの確認を行う必要はない。
特に問題となる印刷物を作成する場合や問題となった時点、あるいは方針を変更した時点で再確認を行えばよい。
新しく取引する場合には、ルールの確認が必要になる。だからといって、詳細にルールを決める必要があるかどうかは別の問題である。
印刷物の目的や原稿の内容を考慮して、あらかじめ詳細なルールを考えるのは、実はそれほど簡単ではない。しかし、校正刷を前にして、何が問題か、どこをどうしたらよいかを考えるのは、実際に例示されているので、原稿よりはルールを考えやすい。
そこで、実際の状況のなかで、どのような指示を行うか、現実的に工夫していく必要がでてくる。
そもそも印刷物を発注する際に発注元でルールを決めるかどうかという問題もある。ルールを決めるには、どんなルールがあるかを確認し、それをどう適用したらよいか検討しないといけない。それには手間と費用が掛かる。
そこで、もっとも簡単な方法は、発注先の印刷所等のルールに従う方法である。原稿の内容にもよるが、信頼のおける発注先であれば、問題が起こる可能性は少ないであろう(発注先の印刷所等では、それなりの方針を持っている必要があるということでもある)。
あるいは、とりあえず発注先のルールで見本組(あるいは初校)を組版してもらい、そこで特に問題となる箇所だけを修正するという方法をとってもよい。
発注する際に発注元でルールを決めるとしても、基本的な事項だけを決める、ということも考えられる。
例えば、小書きの仮名・同の字点は行頭の配置を許容し、行頭の括弧類は、改行は全角下ガリ、折り返しは天付き、ルビは中ツキを基本とし、ブラ下ゲ組はしないで、行の調整処理は、空ける処理を原則とする、といったような指示を行う。
その上で、見本組又は初校で特に問題となる箇所について修正し、より詳細なルールを決めていく、という方法になる。
いずれにしても、発注元では、どのようにしてルールを決め、指示するか、その方法をよく考えていくことが大切である。また、発注先の印刷所等では、自分なりのルールを持っているとともに、発注元の指示があれば、それを尊重し、柔軟に対応していく必要があろう。
■参考(JAGAT通信教育)【DTPオペレーションに役立つ日本語組版】