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近年、東京をはじめ大都市圏に増え続けるマルシェ(市場)。地域活性の視点から、マルシェの魅力を考える。
「マルシェ(市場)」とは、本場ヨーロッパにおいて、生産者が自分たちの育てた野菜や果物、肉や魚、その他の加工品などを持ち寄り、市民の台所として親しまれ、発展してきた市場のことを指す。近年では、東京をはじめとする大都市部における「都市型マルシェ」が増え続け、特に東京では、土日になるとどこかで必ずマルシェが開催されている。日本でも定着しつつある「マルシェ」だが、その背景にはいくつか理由がある。
1つ目は、生産者がこだわって作った良質で安心・安全な農産品を直接購入できるという点だ。食への安心・安全意識が高まりに合わせ、ここ数年は都心近郊の「道の駅」の直売所や産地直送などのブームがあったが、生産者の顔を見ながら商品を購入できるというメリットは、マルシェが持つ大きな魅力の1つだろう。
■2月21,22に開催された、神田淡路町の「WATERRAS(ワテラス)マルシェ」
2つ目は、生産者にとって「マルシェ」へ参加することが、販売チャネルを増やすことになり、ネット通販などの販促にも繋がる可能性がある点だ。そのため、参加したいと考える生産者が多く、訪れる消費者にとって魅力的な生産者や商品が並ぶなど、何度足を運んでも常に新鮮で、発見のあるイベントになっている。
3つ目は、生産者と消費者、または生産者同志や消費者同士をつなぐ、新しい「場」になっているという点だろう。生産者と消費者が近い距離で直接コミュニケーションを取ることにより、自分たちが持つこだわりや商品の魅力を伝えるとともに、消費者ニーズを聞き出すことも可能だ。これまでは、JAなど商品の販売出口が限られていた生産者にとっては、マーケティングの場としても有効だ。また、同じようなこだわりを持った生産者同志や、消費者同士が相互理解を深めることで、副次的効果が生まれることもある。
■地元地域で作られた果物のみを使ったこだわりのジャム
このほかにも多くの魅力を持つ「マルシェ」だが、特に注目したいのは、農産品や特産物、生産者を通して、地域の持つ魅力を発信し、地元の活性化につなげる、という機能である。
2月21(金)、22(土)に、神田淡路町の商業複合施設「WATERRAS(ワテラス)」の一階広場で開催された「WATERRASマルシェ」は、北は北海道から南は沖縄まで首都圏ではなかなか手に入らない逸品が一堂に集まるマルシェイベントだ。そこに参加していた新潟県出雲崎町にスポットを当て、WATERRAS内の展示スペースで出雲崎の魅力を伝えるパネル展を開催していた。
■新潟・出雲崎の魚介類を使ったブイヤベース。展示会場では出雲崎の魅力を使えるパネル展も
このように、マルシェをただの「市場」と捉えず、生産者を知り、こだわりの商品を知り、消費者のニーズを知り、そして地域を知るための機会として捉え、互いの活性化を促す新しい「場」としての役割を付加しているのは、非常に興味深い。
印刷会社はこれまで、程度の違いはあれ地域とともに発展し、顧客の情報発信を支援する存在として経験やノウハウを蓄積、能力を発揮してきた。その上で、多くの地域キーマンを知り、無意識のうちに地域ならではの魅力に触れてきている場合も多い。今後は、それらの知見を活かしてイベントを企画する側へ周り、自分たちが住む地域を活性化し、新しい価値を生む役割が求められている。今後も、地域活性に関する様々な事例を紹介していきたい。