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「クロスメディア」というキーワードから想起されるビジネスやサービスの「現在(いま)」を毎月再考していく。
無名なインディーズ作家が電子書籍の仕組みを活用した自己出版(セルフパブリッシング)が増えてきている。「月刊群雛」の今年1月の創刊はまさにこうしたインディーズムーブメントの象徴的な出来事であった。また日本にも定着しつつあるフェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアの伝播力についても改めて検証してみた。
インディーズ作家の力を結集させた「月刊 群雛」が創刊
2014年1月28日に創刊された「月刊 群雛(ぐんすう)」は、フリーライターの鷹野凌氏が立ち上げた日本独立作家同盟 が創刊させたもので、プリント・オン・デマンドによる書籍版と電子版があります。
「OnDeck Monthly 」(インプレスR&D 2014年1月号)に掲載された鷹野氏のインタビュー記事によると、イギリスに「Alliance of Independent Authors」という団体があり、インディペンデントな作家同士がお互いに交流、情報交換しながら既存の出版社とは違うルートで自由な出版をしようと活動していることに注目し、日本独立作家同盟を設立したそうです。
日本にも個人作家がセルフパブリッシングを行う事例は増えていますが、個々のノウハウは分散されてしまっているので、一カ所に集めて情報共有できる場所を作ることが目的だったといいます。
鷹野氏は、無名でインディペンドな個人作家がセルフパブリッシングするのにあたってのハードルを4つ挙げています。
1)作品を書く(描く)
2)電子書籍の形に制作する
3)流通プラットフォームに登録する
4)プロモーションする
特に4)のプロモーションは、個人作家たちがより集まることで少しでも相乗効果が得られるようにということが日本独立作家同盟の設立趣旨、そして「月刊群雛」の創刊号に掲載されている鷹野氏による「月刊 群雛/創刊の辞」に詩の形式で表現されています。
我々は雛だ。
まだくちばしの黄色い雛だ。
ひとりではろくに餌を採ることもできない。
だから群れを作ることにした。
ひとりではできないことも
みんなの力をあわせればできる気がする。
筆者も設立趣旨に賛同して、設立当初から「Author」枠でエントリーさせていただきましたが、執筆はまだしておりません。しかし、この「創刊の辞」を読んですぐに自分の趣味である弾き語りを活かして、この詩に曲を付けたいと鷹野氏に連絡すると快諾してくれました。
そして吉祥寺で毎月電子出版の交流の場としてフューズネットワーク の池田実社長が主催しているePubPubというイベントでこの曲を弾き語りで披露し、YouTubeにアップしました。
無名なインディーズの歌い手が無名なインディーズ作家たちの応援歌を作り、その曲をソーシャルメディアで公開したという構図です。
こうした新たなコンテンツの生み出され方、流通、そして販売方法はコンテンツ産業全体を活性化していくことになると思います。
「月刊 群雛/創刊の辞」作詞:鷹野凌 作曲:池田敬二
ソーシャルメディアの爆発的な力を思い知った1500リツイート
私が普段活用している主なソーシャルメディアは、フェイスブックとツイッターです。フェイスブックはあくまでも友達となっている方々とのネットワーク内の閉じられた情報発信、交流がメインですが、140文字以内の「つぶやき」を発信するツイッターは言わばネットワークという大海に開かれており、思わぬ出会い、交流、飛び火、炎上を生むことがあります。最近、とても面白い現象が私自身のソーシャルメディア体験としてあったのでご紹介します。
プライベートでも交流のある情報通信総合研究所の志村一隆さんが一枚の画像 をフェイスブックのメッセージで送ってくれました。チェ・ゲバラの生き様に心酔していることを公言している私に、ソチオリンピック女子フィギュアのロシア代表であるユリア・リプニツカヤ選手についてテレビで紹介されている画像を撮影したものです。
なんと愛読書が「キューバ革命に関する本」、愛犬の名前が「チェ・ゲバラ」だというのです。このことをツイッターでつぶやいてみたところ、自分の投稿を読むことができるフォロワーに読んでもらう機能であるリツイート数が1501、ブックマークのようにお気に入りとして保存している数が822(2014年3月2日現在)という爆発的な告知効果を生んだのです。特にリツートの伝播力に驚異的なものがあります。
1501ツイートしてくれたユーザーのフォロワー数を集計してみたところ809,084になりました。フォロワー数はリアルタムに変動するので暫定的な推定値です。さらに、これはあくまでもリツイートのボタンが押された公式リツイートの数なので@で引用されたものを含めるとリーチした人数は100万人を超えていると推測されます。一枚の写真がツイッターというソーシャルメディアによって100万人以上に伝播されたということは驚異的な現象といえるでしょう。
印刷物の役割が告知、伝達、プロモーションといった効果を狙ったものであるのならば、ソーシャルメディアのこうした爆発的な特性を熟知していけば強力な武器となることは間違いないでしょう。
一般社団法人 電子出版制作・流通協議会
池田 敬二
1994年東京都立大学人文学部卒業後、大日本印刷に入社。入社以来、出版印刷の営業、企画部門を歴任。2010年より一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 事務局に勤務。趣味は弾き語り(Gibson J-45)と空手。JAGAT認証クロスメディアエキスパート。日本電子出版協会クロスメディア研究委員会委員長。JPM認証プロモーショナルマーケター。
Twitter : @spring41
Facebook : https://www.facebook.com/keiji.ikeda
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