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近年、「道の駅」の再評価が進んでいる。観光客だけでなく地域住民にとっても利便性の高い施設として人を集め、地域活性の中核的な「場」になる可能性を持っている。
「道の駅」とは、道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供と地域振興に寄与することを目的に、1993年に創設された制度である。同年4月、全国103ヵ所の道の駅が登録証交付を受け、2014年4月には全国1030ヵ所まで拡大している。
道の駅は、道路利用者のために駐車場やお手洗いを提供する「休憩機能」、道路利用者や地域住民のために道路及び地域情報を提供する「情報発信機能」、「道の駅」を介して地域内外の連携を深め活力ある地域づくりを共に行うための「地域の連携機能」という3つの機能を持つ。
制度施行当初は、物流や観光客など地域を通過する利用者向けサービスが中心だったが、近年は地元市民の利用客が増加、ニーズの変化に合わせ農林水産業や観光、福祉、防災、歴史文化など、各地域が持つ個性や魅力を活かした様々な商品やサービスを提供している。
例えば、「農林水産業」では、地元の農水産物の直売に加え、それらの素材を加工してオリジナル商品を開発、販売するなど、6次産業の拠点となる道の駅がある。また、「観光」では、地元の観光資源を活かした独自ツアーの企画・実施や、観光マップに乗らない観光情報を供給、農業や漁業を体験する地元交流型の宿泊プランなど独自体験を提供する取り組みが増えている。
道の駅「赤来高原」(島根県)のオリジナルモニターツアー
2001年にオープンした山口県萩市の「萩しーまーと」は、市内の漁業協同組合、鮮魚仲介業者、食品加工業者が共同で設立した「ふるさと萩食品協同組合」によって運営される道の駅である。全国にある多くの道の駅は「公設民営」方式を取るが、「萩しーまーと」は自由度は高いが運営ハードルも高い民設民営方式を採用、市から補助金を受けて施設を整備し、地域農水産業の活性化を目的とした多目的拠点として設置した。
同施設の商圏は半径50km圏、人口規模は十数万人と決して大きくない。また、市内には他に6つの道の駅が存在、大型ショッピングセンターやスーパーマーケットなど競合も多い。その環境下、同施設の年間の売上規模は約10億円、利用者数は150万人以上と、県内随一の観光施設になっている。
利用者構成は同市民が約5割、その他県内の利用客が約3割、残りが県外からの観光客だ。メインターゲットが地元市民である同施設には、鮮魚を中心に、農産物や肉、惣菜など地域の“旬”の食材が毎日集まってくる。それらを17のテナントが新鮮・安全・安価で地元市民に供給する、公設市場スタイルで運営している。
当初は観光地としての道の駅を構想していたというが、天候や曜日、季節変動を考え安定的な経営は難しいと判断、コアターゲットを地元市民に絞った地域型の道の駅に方針を転換した。リピート客獲得のため、徹底的に地産地消にこだわり全国規格品は排除するなど、地元ならでは魅力ある商品だけが並んでいる。
生産者が新鮮な旬の食材を提供する「萩しーまーと」
「萩しーまーと」は、前述した道の駅の3機能に以上のような「地産地消の拠点」機能を付加するだけでなく、ほかにも地域の優秀な食材をTVなど様々なメディアを通して情報発信する「地物農水産物の情報発信拠点」機能や、旬のおさかな試食イベントでビジターを誘客する「萩市の“食”観光拠点」機能、地域の隠れた食資源をブランド化する「地域資源ブランド化の拠点」機能など、9つの新しい機能を持つ多機能拠点施設として、地域の活性化に大きく貢献している。
道の駅は、基本機能に留まらず地域に貢献し、活性化させる様々な取り組みが試せる「場」である。近年は地元市民のための施設という側面も強まり、社会インフラとして役割や公的機能、サービスも求められるようになるなど、中山間部、平地農村部、都市部と駅の設置されている環境によって、利用者や地元市民の生活を支援する「場」になるのか、地域ネットワークの核となって、コミュニケーションやイノベーションを創出する「場」となるのか、それとも両方なのか、駅によってその機能や役割が多様化してきている。
全国の設置個所が1000を超え、次のステージへと突入した道の駅だが、ただ商品を陳列して提供するだけの時代は終わり、利用者の顔ぶれやニーズ、生活環境変化などを的確に捉え、利用者に必要とされる商品やサービスを生み出し続けることが求められる。それと同時に、その道の駅を訪れなければ購入できない、食べられない、体験できないなど付加価値の高い商品やコンテンツを充実させるなど特色を作り、独自性や個性ある施設づくりをしていかなければ、他の競合他者に負けて、生き残れない場合もあるだろう。
利用者のニーズを満たすだけでなく、地域生産者の生活も支える地域活性化の中心的存在として、道の駅が今後担っていく役割は大きい。印刷会社は、多くの地域情報を持ち、顧客の情報発信を支援する存在として経験やノウハウを蓄積、能力を発揮してきた。地域社会の一員として、地域活性化を願い担うものとして、自分たちに何ができ、何を提供できるのかを考え、連携しながら地域を活性化していく道を模索したい。
※参考:法政大学地域研究センター主催 全国「道の駅」シンポジウム(2014年5月14日)