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紙を基点にパソコン・ケータイ・テレビ・デジタルサイネージなどへのワンソースマルチユース展開が可能になれば、チラシは新たな可能性を開くことができる。
2008年の秋は、大手テレビ局や大手新聞社の赤字が伝えられた。新聞購読率の低下もあって、苦戦する紙媒体の中でも優等生的な位置付けにあった折込チラシも需要が減少しつつあり、メディアとしての到達率低下が懸念されている。
朝夕刊セットの購読率は約30%まで落ち込み、折込チラシを読む人の割合も約40%まで低下しているという。単純計算すると、折込チラシを読む割合は、全世帯の約10%まで低下している可能性がある。
雑誌とラジオ離れも続いており、マスコミ4媒体や折込チラシといった従来型メディアの苦戦が目立つ。
一方ではインターネット広告や店頭などでクーポンを使うようなプロモーションやモバイル広告は堅調だ。ターゲットセグメントの容易さや、クリック回数や発行枚数の把握、到達率の高さや消費行動への影響度の大きさを実感できるメディアが選ばれやすい時代を迎えている。広告主は、大衆への認知に広告費を投下するより、細分化されたターゲットの消費行動に適したメディアを選んで販促費と引き換えに売り上げ増を狙う姿勢を強めている。
こうした既存メディアにとって厳しい状況の中、2008年秋の第2四半期決算短信によれば、凸版印刷と平賀がチラシ売上高を伸ばしているようだ。2社とも理由に電子チラシサイトの貢献を挙げている。電子チラシが紙チラシの売上高を誘発する実用段階を迎えたと見てよいのではないか。
凸版印刷の電子チラシポータルサイト「Shufoo!」は350社、1万2000店舗のクライアントを持ち、5000万超の月間PVを有するに至っている。「Shufoo!」は登録者のパソコンにチラシの発行を知らせることができ、ケータイからもアクセスできる。利用者の商品別クリック回数もリアルタイムに把握できるので、掲載商品の商品別注目度の測定や開店前時点での商品別売上動向予測が可能になった。
チラシの効果測定が可能になると、店舗では開店前時点で商品の追加注文をして品切れロスを予防するような具体的な効果が期待できるようになった。電子チラシにはメーカーも大きな期待を寄せているようだ。例えば自社製品のチラシ掲載に対するインセンティブとしての広告費を投下するような動きも増えるだろう。
大手流通各社はネットスーパーへの取り組みを具体化させているが、2011年テレビの地上デジタル波への移行後は、テレビでチラシを見てテレビで買い物を注文し、スーパーが配達するシーンも想定されている。紙を基点にパソコン・ケータイ・テレビ・デジタルサイネージなどへのワンソースマルチユース展開が可能になれば、チラシは新たな可能性を開くことができる。
チラシは制作で印刷会社のノウハウの優位性を発揮しやすいし、お茶の間へ入り込めるテーブルメディアとしての強みがある。広告主はこうした買い物の現場に近い場所へ広告費を投下して消費行動に影響を及ぼしたいと望んでおり、チラシと効果測定ツールを中心に新たな展開が始まっている。
プリンティング・マーケティング研究会
2008年12月5日セミナー「電子チラシの最新動向」より
「JAGAT
info」2009年2月号