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現在の世界的な金融危機が1929年の大恐慌に本当に匹敵するかどうかは議論が分かれるが、情報メディア業界は100年に一度の転換期を迎えている。
現在の世界的な金融危機が1929年の大恐慌に本当に匹敵するかどうかは議論が分かれるが、情報メディア業界は100年に一度の転換期を迎えている。
戦後型のビジネス構造を基盤にする新聞、雑誌といったメディアについては、ハードランディングシナリオも視野に入ってきた。緩やかなマイナス成長を続けてきたところに、リーマン・ショックによる金融危機の影響が直撃した。
メディアビジネスの主たる収入源は、(1)企業からの広告収入、(2)消費者からの利用収入、(3)資産運用による本業外収入の3本柱だが、金融危機でこの3つが同時に機能停止した状況にある。
2008年の秋は、朝日新聞社、日本テレビ、テレビ東京といった、名だたるマスコミ各社の第2四半期赤字決算が報じられた。インターネット広告も、2008年後半には初のマイナス成長を記録した。
従来型メディアビジネスと新興メディアビジネスが同時にクラッシュしたような状況は、まさに100年に一度と思われる。
2000年以降、邦画の制作本数は邦画黄金期の1970年代に匹敵するまでに増えていた。作ったはいいが、死蔵されている作品も相当数があるという。近年の地上波テレビでは深夜の1時~3時がアニメのゴールデンタイムと化すほどの作品数が量産されていた。
このようなコンテンツバブルをもたらしたのは、2000年以降に多く立ち上げられたコンテンツファンドである。収益分配を条件に広く投資を呼び込み制作費に投下する。
しかしリーマン・ショック以降、このようなコンテンツファンドに投資する余力を持つ投資家や投資機関はいなくなった。コンテンツ制作事業者には、これから厳しい状況が待ち受けている可能性が高い。
近年はフリーペーパーやインターネットの各種サイトのように、制作費、運営費を広告収入でまかなう無料メディアが活況を呈してきた。
生活者は情報があたかも“タダ”であるかのような幻想を持った。しかし今回のような有事の際、企業が広告費支出を一斉に引き締めると、広告収入への依存度が高い無料メディアへの資金流入は止まってしまう。
業績連動で拡縮しやすい企業広告費に依存するビジネスのリスクが顕在化した。今後はクライアントによる選別と淘汰が進もう。情報が再び有料化する可能性も残される。
このような不況の時にこそイノベーションの有用性は高まり、思い切った提案が受け入れられやすくなる。
景気後退から脱け出して成長曲線を描くには旧来の商慣習を打破し、自立自走の収入構造を再構築して、従来型ビジネスから脱却しておくことが前提になる。
そのためには効果測定の透明性確保、費用対効果の説明手法確立、クロスメディア提案の技術が不可欠になろう。イノベーションが生まれた時に次代の成長領域が確保され、真に景気後退から脱け出すことができる。
(『JAGAT info』2009年4月号より)