本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
コストダウンは結果であり、標準化、合理化、業務改革が目的でなければ日本では受け入れられない。
日本でもプリントマネジメント事業が立ち上がり始めた。日本にも以前から印刷コンサルタントはいたが、現在立ち上がり始めたプリントマネジメント事業はその取り組みが組織的である点において従来と異なる。
プリントマネジメントの発祥は1990年ごろの英国と言われる。登場すると急速に浸透して、現在は英国の印刷物発注の30%近くがプリントマネジメント会社を経由するまでになり、その手法は欧州や米国などにも広がったという。
しかし、このビジネスモデルを日本にそのまま持ち込めるのか、日本でどこまで普及するのかは未知数だ。日本と海外ではビジネスの進め方や印刷担当者の役割、印刷会社の受注スタンスなどの文化や風土が大きく異なるからである。
英国では、印刷の発注担当者が印刷会社や用紙会社について相当な知識を持つ必要がある。日本では印刷会社に発注さえすれば、基本的には印刷会社が多少の無理でも何とかしてしまう。
ところが英国では印刷会社が自社で生産できない受注は断ってしまう。また、用紙についても印刷発注者が調達して印刷会社に供給するような、印刷会社は印刷するだけ、という割り切りがあるという。
初期のプリントマネジメントは、このような発注者と受注者側の役割分担を背景に、印刷発注者の負担を軽減し、目的に最適な印刷会社を提案するようなコストダウンモデルとして広まったようだ。
しかし、コストダウンも一巡してしまえば、プリントマネジメントビジネスの余地は限られてくる。
従って、コストダウンの次の段階では顧客業務のコンサルティングに移行する必要がある。業務を可視化し、標準を決め、効果測定の指標(KPI)を決める。データベースを作成して駆使し、標準と実際の工数の差や価格表、発注工程、物流ルートなどについてコンサルティングする。
つまり、ある意味で、一度ムダを取ってしまえば、その後のコストダウンの効果は知れている。継続的には業務の標準化や費用対効果の向上手法に焦点は移っていく。この段階における視点はコストダウンや合理化よりも業務監査に近くなるようだ。
日本で立ち上がったプリントマネジメント事業はすべて、英国に本拠があったり、米国のプリントマネジメント会社を買収していたり、英国に社員を送り込んだりしてノウハウがあり、このへんの事情は事業化段階で研究済みである。
日本は英国などに比べれば、既に印刷会社は相当に至れり尽くせりのサービスを提供している。顧客側は英国ほど大きく削減できるほどの印刷発注コストを要していないことが多い。従って、顧客の軽減負担に印刷会社がコスト削減だけに焦点を当てた手法の入り込む余地は大きくはないだろう。
コストダウンは結果であり、標準化、合理化、業務改革が目的でなければ日本では受け入れられない。合理化余地を探し、印刷媒体の費用対効果を高める。顧客の利益を最優先し、各社ともコンサルティングを受注の手段にしないスタンスを大切にしている。
(『JAGAT info』2009年5月号より)