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画質基準はモニターやプリンタに移る

カラーマネジメントが一般化して、最初からさまざまな色デバイスに実装されるようになると、当然モニターで画像評価をする機会が増える。デジタルカメラを扱う人も最初に目にするのは液晶ディスプレイであろうし、アマチュアの写真家でも小さなライトテーブルを所持しているように、画像の検討もカラーマネジメントされたモニターで行われるようになる。人と意見交換する際にはプリンタが使われるだろう。要するに画像の基準はカラーマネジメントされたモニターやプリンタに移っていく。

このように印刷外でカラーマネジメントが進んでいくのは、モニターやプリンタに出す目的のみでグラフィックアーツの仕事がされることが多くなるからである。まずパソコンで静止画を表示することは当たり前になった。ブロードバンドで画像データの交換が容易になるが、jpgファイルの表示やダウンロードでは権利問題が心配なので、何らかのオーサリングをして、スライドショウ、静止画に音声で説明をつけたもの、ページめくりのようなインタラクティブ性をもたせたものなどが盛んに使われるようになるだろう。

カラーの印刷をして配布するとなると初期コストがかかるが、ネットでの情報交換は無料というコスト落差は非常に大きいので、今まで画像を人に見せることが実現しなかった潜在的な画像ニーズが前述のような形で噴出しつつある。さらに展示画像などでは、大型のディスプレイが随所に設置されている時代なので、そこに静止画を出すことも広まるだろう。特に水気のある透明感のある画像や「ヒカリモノ」は印刷物よりもディスプレイに出したほうがきれいに見えるかもしれない。

このような電子表示の静止画の世界の広がりの一部は印刷物制作に反映してくる。膨大なフォトストックから「unFASHION」という視点で写真を選んでファッション写真集を作った例があるが、今後はネット上に公開されている写真を編集することも増えるだろう。静止画を扱う人々にとってはデジタルカメラの次に身近なITはネットなので、カラーのリモート校正の一般化が大きなテーマになる可能性がある。

こうなるとすると、今までは印刷物制作の内側の課題としてのカラーマネジメントを考えることが多く、印刷がカラーマネジメントを主導していくという姿勢もあったが、実際にはカメラマンとの間でカラープロファイルの取り決めをすることは容易でない。むしろAdobeRGBなどをターゲットにしている色のデバイスに合わせていくことの方が現実的である。

顧客との1:1でカラーマネジメントに取り組む余裕のある仕事がどれだけあるのだろうか。マスプロダクションとしての印刷ビジネスを考えるならば、印刷の外に整いつつあるカラーマネジメントの環境に合わせて印刷が対応するというように姿勢を変えなければならない。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2006年7月号より

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2006/09/05 00:00:00


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