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MISのJDF対応の道筋

2月8日に行われたPAGE2007コンファレンスMISのJDF対応の道筋セッションについて報告する。
ユーザの立場から今後のMISの位置づけ、方向性、JDF対応についてお話を伺った。


(株)帆風の日隈俊治氏からは、同社の辿ってきた情報化の道筋とJDF対応へのアプローチについてお話を伺った。
帆風では、それぞれの部署の担当者が自らシステム開発する形で情報化を進めてきた。そのため仕事のやり方が変わっても機能の追加や修正が容易に対応でき、使う人の立場で最適化された使いやすいインタフェースという利点を持っている。
一方で、デメリットとしては、自部門で最適化されているため、前後の工程との連携ができず、他部門の人にとっては使いにくいシステムとなる。それから、開発は各部門の社員に依存するので、部門ごとに技術力の差が出てくる。技術力だけでなくファイルメーカー、エクセル、アクセス、4Dなど千差万別のシステムとなる。

こうした課題に対し、少しずつシステムの統廃合を進めており、その一環としてJDFへの取り組みがある。帆風では、JDFを入稿から納品、請求まで、生産のワークフローと同じように滞りなく情報を流すためのツールとしてとらえている。情報の再入力や転記を減らし、情報の品質を落とさずに一元管理できることを目的としている。
JDF対応にシステムを刷新するにあたり、オーダーメードによる開発とパッケージソフトの導入を検討した。
オーダーメードによる開発は、自社の業務に合わせて仕様設計できるというメリットがある。しかし、システム会社に開発期間、コストの試算をしてもらったところ、印刷とポストプレスの範囲に限っても開発期間は1年以上、コストは2億円近い金額となった。帆風の場合、社内の改善、変更の速度が速く、1年以上かかってしまっては開発が終わらない間に仕様変更が発生するような状況となってしまう。また、開発後も社内で手を加えられるものでないとシステムの寿命が短命に終わってしまうリスクがある。

パッケージソフトの導入する場合、まずJDF対応のMISパッケージが少ないという状況がある。それから、パッケージソフトの仕様に合わせて業務を合わせる必要が出てくる。カスタマイズするとしても、あまり手を入れていてはオーダーメイドと大差なくなってしまう。

どちらにしても帆風には合わないと考え、次のような要件を実現させる方策を探った。


これらの要件に対応するために、現状の社内システムの見直し、統合を進めた。手始めに営業が個々にEXCELで作成している見積り書をデータベースに蓄積できるようにした。そして、個々のシステムを再構築したうえで、各部門のデータベースからデータを吸い上げて一元管理する中心的なデータベースを新たに作成することにした。これを「DataCentral(データセントラル) XML DB」と名づけている。XMLのデータベースを使う理由としては、データ項目の追加・変更に柔軟に対応するためである。

このような仕組みを構築することで、各部門は使い慣れたユーザインタフェースで仕事ができ、必要な情報はセントラルDBから取り出せるので、工務部門などは得意先、品名、納期といったデータの再入力をする必要がなくなる。

次にJDFへの展開については一から社内で開発するのではなく、既存の製品で利用できるものを積極的に取り入れるように考えた。ユーザがJDFの仕様を理解して、生産機器との連動まで実現するには敷居が高すぎるからである。 そこで、JDFに対応した生産機器とのインタフェースは、オリーブ社のPrintSapiensに任せることにした。各部門の情報を一元管理するセントラルDBとPrintSapiensとを接続することで、見積りや入稿時に入力された部数やサイズといった情報をJDF対応機器まで流すことが可能となる。そして、JDF対応機器から戻ってくる実績情報もセントラルDBで一元管理しようという構想である。当面は、PrintSapiensのMISとしての機能は一切使わずJDFインタフェースとしてのみ活用することになる。今後、もし業務が標準化され各現場でもPrintSapiensが使えるような状況になれば、PrintSapiensに切り替えるも良しという二段構えの構想である。

しかし、いざやり始めるとさまざまな問題点が出てきている。各部門のシステムは独立性が高く、部門外からの改善要求には抵抗が根強い。また、いざデータベースを統廃合しようとすると、作成者が異動していて部門には詳しい人間がいなかったりする。
また、セントラルDBを構築したときに、変更情報の更新、各部門のシステムへの反映をどうするかという難題がある。さらに、XML形式でデータを蓄積するとなると1件の受注情報、すなわち、顧客情報、入稿ファイル情報、作業指示、印刷仕様、配送先、荷姿等々で、1件あたり150Kbくらいになってしまう。一日200件の依頼があるとすると、150kb×200件で、毎日30MBずつデータが増えていくことになる。この状態で継続的にデータを蓄積していくと、すぐに天文学的な容量となり、非現実な話になってしまう。
これらの課題に対して、今まさに社内体制を整え、解決に向けた活動を始めたところである。


(株)アートスキャナサービスの上條健一氏からは、MISの現状と今後のあるべき姿、そしてそれらを踏まえ同社で開発したMIS「YAWAR@貝」の特徴と機能についてお話いただいた。

印刷業界のMISの現状は、以下のようなものである。

今後のあるべき姿としては次のようなものであろう。
そして、次世代MISに求められる最低限必要な機能として次の二つがあげられる。
忘れてはならないのは、管理対象はJDF対応機器ばかりではない点である。MacDTP作業、仕分けや検査作業、運送・梱包・発送作業など人が介在すれば、必ず原価が発生することを留意しなければならない。

これらを踏まえて開発された「YAWAR@貝」は次のような特徴を持っている。


進捗管理については、進捗状況の問い合わせに対して社内の誰でも回答できるようになっているほか、勤務シフト管理と連動した作業割り振り、負荷状況の色分け表示といった機能がある。また「作業終了」をクリックすると自動的に品質管理のチェック項目が表示されるようになっており、チェックが完了しないと次工程に仕事が流せないようになっている。
具体的なワークフロー図を以下に示す。

JDF対応については、まずJDFありきではなく、業務プロセスの改善が必須だと考えている。業務プロセスの改善が実施され、生産現場のCIM化が進めば、おのずとJDF連携が必要となってくる。
JDFを使った情報交換の例として、RIPシステムのTrueflow3との連携がある。従来は、Trueflowのジョブ登録の際に、ジョブ名(品名)、受注コード、作業担当者、納期、得意先情報といった情報を改めて入力していたが、JDFを使ってMISから取り込むようにしている。このように必要に応じて、効果の出るところから取り組むようにしている。

2007/02/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会